1、北朝鮮からの指示

 (1)、朝鮮総連の活動資金

  ・朝鮮総連は、在日朝鮮商工人からの献金、北朝鮮からの教育援助金などによって運営されていた。しかし、北朝鮮は経済的に苦しくなっており、1975年には37億という巨額が教育援助金名義で総連に送られてきたが、その額は年々低下し、1986年には6億8000万円となり、この6億程度の額すら重荷になっていた。

 (2)、北朝鮮からの指示

  ・1986年9月、金正日から朝鮮総連は経済的に自立しろという旨の指示が送られてくる。これ以後、朝鮮総連は不動産やパチンコなどの経済活動をはじめるようになる。北朝鮮の意図は、教育援助金を削減し、さらには朝鮮総連の経済事業で総連から北朝鮮に利益を運んでくるというものであった。

2、朝鮮総連の経済事業

 (1)、北朝鮮相手の輸出入

  ①、朝鮮総連系の商社

   ・総連には東海商事、朝・日輸出入商社など北朝鮮相手に輸出入をして営利活動をしている株式会社が数社あったが、さらに会社を設立していった。

  ②、失敗

   ・日本が欲しがる商品が北朝鮮にはほとんどなかったので、北朝鮮間の輸出入では利益がでるところが赤字経営になりかねかった。

 (2)、パチンコ事業

  ①、意義

   ・在日朝鮮人が強い分野がパチンコ事業である。よって、総連も許宗萬(ホジョンマン)を総責任者としてパチンコ事業に乗り出した。

  ②、東北地方へ出店

   ・パチンコはすでに総連系の商工人が全国に出店をしていたが、東北地方は少なかった。よって、総連系商工人のパチンコ店との競争を避けるために、総連は東北地方にパチンコ店を出店していった。

  ③、最盛期

   ・大規模パチンコホールを郊外に建設し、朝鮮大学校や朝鮮学校卒業者を低賃金で従業員として雇い人件費を抑制し、朝鮮総連中央で20店舗、地方本部も中央を真似て40店舗ほどが経営され、1990年代前半にはかなりの利益を上げた。

 (3)、不動産事業

  ①、意義

   ・不動産業も在日朝鮮人が強い分野であり、かつ当時はバブル経済の開始期でもあった。総連も許宗萬を総責任者として不動産取引、それも詐欺師やヤクザと絡むことが多いのでリスクも伴うが利益も多い地上げを中心に行った。

  ②、最盛期

   ・名古屋駅周辺や大阪の江坂で地上げに成功し、双方で60億の利益を出すなど、バブル全盛期にはかなりの利益を上げた。

3、担保に使われた総連の財産

 (1)、担保に使われた総連の財産

  ・パチンコ店や不動産屋の経営のための資金調達は、朝銀信用組合等が総連所有の不動産を担保にして融資をした。

 (2)、具体例

  ・近畿学院→朝銀大阪信用組合が40億円、住宅ローンサービスが16億円

  ・生野朝鮮幼稚園→朝銀大阪信用組合が18億9000万円

  ・大阪朝鮮教育文化会館→住宅ローンサービスが35億円、朝銀大阪信用組合が8億円

  ・生野朝鮮初級学校→大阪私学振興会が2億円

  ・大阪総連本部→朝銀大阪信用組合が11億8000万円
  
  ・朝銀大阪信用組合本店→在日本朝鮮信用組合協会が17億円

  ・京都朝鮮初中級学校→東京リースが40億円

  ・神戸朝鮮高級学校→東京私学振興会が10億3000万円

  ・東京朝鮮第八初級学校→大同生命保険相互会社が42億円

  ・総連中央学院→北海道拓殖銀行が100億円

  ・朝・日輸出入商社→インターナショナル企画が65億円

  ・出版会館→大林フローラ606他が25億円、朝銀神奈川信用組合が10億円

  ・朝鮮新報社→朝銀東京信用組合他が86億円

  ・共栄商事→朝銀大阪信用組合他が56億円

  ・朝鮮大学校横の土地→朝銀東京信用組合他が109億円

4、経営の失敗

 (1)、パチンコ事業

  ・バブル崩壊以後、総連のパチンコ店は軒並み赤字を計上した。結局は店舗を売却したり、他の在日朝鮮人経営者と共同経営ということで経営権を譲ったりして、現在において朝鮮総連中央はパチンコ店経営から撤退、地方本部でも数店舗しか経営していない。

 (2)、不動産事業

  ・バブル崩壊以後、莫大な損失を計上した。例えば、九州の小倉では地上げに関してヤクザともめて200億~300億ほど投資したが失敗し、そのうちにバブルが崩壊して大損をした。

 (3)、担保に入れた不動産の競売

  ・融資を受けた際に担保に入れた総連所有の不動産は、次々と競売をされている。朝鮮新報社、朝鮮出版会館、金剛山歌劇団の施設、朝鮮大学校の第二グラウンドなどはすでに差押えが入っており、また、宮城県本部、千葉県本部、愛知県本部、滋賀県本部、大阪府本部、東京都本部、西東京本部の建物、敷地などが不良債権の担保となっている。

<参考文献>

 『朝鮮総連』(金賛汀、新潮新書、2004)