1、 朝銀信用組合とは

 (1)、朝銀信用組合とは

  ・在日朝鮮人は日本の金融機関から融資を受けることが難しいので、自分達で金融機関をつくり相互扶助の機関としようという考えで設立された信用組合。1952年に同和信用組合が結成されたのを皮切りに、1955年代から朝鮮総連の活発な設立運動によって、全国で次々と設立されていった。
 
  ・朝鮮総連が結成された1955年では全国8組合14店舗、預金総額8億8000万円しかなかったが、1990年には全国38組合176店舗、預金総額2兆375億円まで拡大した。

 (2)、呼称

  ・呼称は朝銀+(地名)+信用組合(例えば、朝銀東京信用組合)となる。なお朝鮮銀行は戦前に日本が朝鮮半島に設立した特殊銀行、朝鮮中央銀行は北朝鮮の中央銀行のことであり、直接的な関連性はない。また、在日韓国人が設立した信用組合は商銀信用組合である。

 (3)、朝鮮総連との関係

  ・総連は各県の朝銀信用組合を在日本朝鮮信用組合協会のもとに統制し、組合長などを総連に忠実なものにすげ替えていった。これにより、朝銀信用組合は総連の絶対忠実の組織となっていった。

2、朝銀信用組合の破たん

 (1)、関西

  ①、朝銀大阪信用組合の破たん

   ・1997年5月、朝銀大阪信用組合は経営破たんをする。同年11月に近畿地区の5朝銀(滋賀、奈良、和歌山、京都、兵庫)が統合して朝銀近畿信用組合が設立され、朝銀大阪信用組合の事業はここへ譲渡され、1998年5月に公的資金3102億円が投入された。この朝銀大阪信用組合の経営破たんをきっかけとして、全国の朝銀信用組合が破たんをしていく。

  ②、朝銀近畿信用組合の破たん

   ・2000年12月、朝銀近畿信用組合が経営破たんをする。公的資金が投入された後に短期間で二次破たんをしたのは朝銀近畿信用組合がはじめてであった。

  ③、ミレ信用組合の設立

   ・2002年8月、経営破たんした大阪、奈良、和歌山の3つの信用組合の受け皿として、ミレ信用組合が設立される。
 
 (2)、関東

  ①、朝銀東京信用組合の破たん

   ・1999年5月、朝鮮総連中央のメインバンクの朝銀東京信用組合が経営破たんをする。公的資金投入前の調査によると、360億もの不正融資が判明した。

  ②、ハナ信用組合の設立

   ・2002年12月、経営破たんをした東京、関東、千葉、新潟、長野の5つの信用組合の受け皿として、ハナ信用組合が設立され営業を開始した。

3、破たんの原因


 (1)、北朝鮮への献金に利用された朝銀信用組合

  ①、意義

   ・朝銀信用組合は、日本の金融機関からはなかなか融資を受けられない在日朝鮮人の零細企業に対して融資や相談にのってうまく機能していた。しかし、1974年頃に北朝鮮が対外債務の返済困難に陥ると、外貨獲得のために朝鮮総連は朝銀信用組合を使って在日朝鮮人から献金を募るようになっていった。

  ②、融資をする代わりに献金作戦

   ・1980年代後半になると、日本の金融機関が敬遠するような投資計画に対して、総連幹部の紹介があれば、融資額の10%から20%を北朝鮮に献金することを条件に融資をするという、金融機関として邪道の融資を行うようになった。

  ③、破たんの原因

   ・朝銀大阪信用組合は、経営が不安定な在日朝鮮人が経営する零細工場へ北朝鮮への献金を条件に融資をしていた。バブル崩壊後、これら零細工場が一斉に倒産し、朝銀大阪信用組合は多額の不良債権を抱えることとなった。

 (2)、朝鮮総連の経済的自立化のために無茶や融資を行った朝銀信用組合

  ①、意義

   ・1986年9月、金正日から朝鮮総連は経済的に自立しろという旨の指示が送られてくる。これ以後、朝鮮総連は不動産やパチンコなどの経済活動をはじめるようになる。

  ②、朝鮮総連所有の不動産を担保に無茶な融資をする

   ・パチンコ店や不動産屋の経営のための資金調達は、朝銀信用組合等が総連所有の不動産を担保にして融資をした。

  ③、破たんの原因

   ・朝鮮総連所有の不動産をかなり過大に評価した不正融資がなされていたので、これらが不良債権化していった。

<参考文献>

 『朝鮮総連』(金賛汀、新潮新書、2004)