稗史

社会の片隅で生きる人達の虚実織り交ぜた物語

 ・ヤクザvs警察

ヤクザvs警察 「捜査」と「癒着」の境界線

1、ヤクザと癒着する警察

 (1)、意義

  ①、ヤクザに捜査情報を流す警察官

   ・警察官がヤクザに捜査情報を流す事件がよく起こります。男性警察官の場合は、「恩を売れば、情報を収集できると思った」「警察の情報を提供することで関係を維持したかった」とヤクザから情報を収集するために捜査情報を流した、またはヤクザから金銭の授受や接待を受けて捜査情報を流したという場合が多いですが、女性警察官の場合は、警視庁新宿署の女性巡査や、これは警察官ではありませんが静岡地裁の検察事務官の女性など、ヤクザとの恋愛関係を維持したいがために捜査情報を流したというパターンが多いです。

  ②、制裁

   ・ヤクザから情報を収集したいがために捜査情報を流したような場合は、氏名は公開されず停職や減給処分で依願退職、ヤクザから接待や金銭の授受を受けていた場合は、氏名が公開されて懲戒免職というのが一般的な相場のようです。犯罪としては、ヤクザに情報を漏洩させると地方公務員法(守秘義務)違反、ヤクザから金銭を受け取ったり接待をうけたりすると単純収賄罪が、さらにその対価として情報の提供まで行うと加重収賄罪が成立します。

 (2)、実証

  ①、警視庁

   ・警視庁組織犯罪対策4課の巡査部長(40)が、平成25年(2013)1月末から2月4日までの間、住吉会系組員に山口組系組長に関する捜査情報が記載された書類を渡していた。

   ・警視庁新宿署の女性巡査(23)が、平成29年(2017)12月に交際をしていたヤクザからの「自分が捜査対象の事件はあるか」との問いに対して、捜査の進展状況を組員に伝えた。この巡査は停職6か月の処分を受け、依願退職をした。

  ②、愛知県警

   ア)、ブルーグループ事件

    ①、事件

     ・ブルーグループとは、名古屋を中心に全国に風俗店を中心に貸金業や不動産業まで幅広く経営していた、佐藤義徳氏率いるグループ企業である。平成23年(2011)4月、愛知県警は、佐藤や六代目山口組弘道会若頭・竹内照明氏を詐欺容疑で逮捕した。さらに平成25年(2013)1月には、佐藤が弘道会捜査を担当していた県警幹部を脅迫していたとして、脅迫容疑で逮捕した。

    ②、公判における衝撃の証言

     ・この事件の公判において、証人として出廷した愛知県警OBが、愛知県警の10人以上の捜査委員が、佐藤に風俗店の摘発情報を漏らす見返りに、接待や現金を受け取っていたことを証言した。佐藤も逮捕前に、「署長クラスを含め20人以上を飼っている」とうそぶいていたという。実際に、平成25年(2013)9月に、佐藤に情報を漏らしていたとして、愛知県警捜査一課の警部が地方公務員法(守秘義務)違反容疑で逮捕、起訴された。この警部は公判で「警察内はまだ暴力団関係者と癒着している人間が多数いるのに、なぜ私だけなのか」と発言したという。この警部は懲戒免職となった。

    ③、愛知県警と弘道会の癒着

     ・愛知県警OBは、「ブルーグループとウチとの癒着は佐藤がパクられる前から、(県警)内部では公然の秘密で、佐藤の公判で表沙汰になった後も、佐藤から接待を受け、カネをもらっていた幹部や捜査員が一掃されたわけじゃない。また、ブルー以外にも司興業など『弘道会系』といわれる風俗グループは複数あり、それぞれがブルーと同様に、幹部や捜査員を飼っている。もはや愛知県警と弘道会との癒着は捜査員個人の問題ではなく組織ぐるみで、ブルーの事件後にも、弘道会との関係が深いとみられる会社が、県警本部の設備工事を落札している。事前にタレコミがあったにもかかわらず、だ」とする。

   イ)、愛知県警捜査第四課の巡査部長(37)が、平成29年(2017)12月末から令和2年(2020)3月下旬までの間に5回に渡ってヤクザ関係者に対して捜査内容を含む警察側の情報を提供していた。この巡査部長は依願退職した。

   cf.令和3年(2021)10月6日、建物の屋上で「愛知県警は暴力団とつながっている」と叫ぶ男が出現しました。この報道のコメント欄は「みんな知ってる」でばかりです。


  ③、大阪府警

   ア)、大阪府警西淀川署巡査部長情報漏洩事件

    ①、事件

     ・平成22年(2010)5月、不動産会社の元役員と山口組系I会の組長が詐欺容疑で逮捕された。元役員の関係先を家宅捜索したところ、マル暴担当の捜査員の自宅住所などが書かれた名簿が発見された。その後の捜査により、大阪府警西淀川署の巡査部長(40)が捜査情報を漏洩していたことが判明した。なお、この捜査の過程で渡辺二郎氏と島田紳助氏がやり取りしたメールや、島田紳助氏と暴力団関係者との関わりを示す資料が発見され、島田紳助氏は芸能界引退に追い込まれた。

    ②、癒着

     ・元役員は風俗店を経営しており、摘発を事前に把握するため、平成19年(2007)から平成23年(2011)にかけて、警察車両十数台分の情報の提供をこの巡査部長から受けていた。その見返りとして、平成18年(2006)から平成20年(2008)にかけて計数百万円ほどの金銭や、約10万円相当のスーツ2着の提供を受けていた。さらに、この巡査部長は元役員のローンの連帯債務者となっていたり、巡査部長の交際女性の転職先を元役員にあっせんしてもらったりと、かなり癒着が進んでいた。この巡査部長は懲戒免職となった。

  ④、奈良県警

   ・奈良県警橿原署地域課の警部補(49)が、奈良県警組織犯罪対策二課に所属していた平成17年(2005)から18年(2006)の間、暴力団組長を保証人として、組長の知り合いから計約320万円を借りていた。県警監察課は暴力団への警察情報の漏洩は確認できなかったとする。この警部補は懲戒免職となった。

   ・奈良県警橿原署地域課の巡査部長(56)が、奈良県警組織犯罪対策二課に所属していた平成16年(2004)に、暴力団組長の周辺人物から約30万円の腕時計の贈与を受けた。県警監察課は暴力団への警察情報の漏洩は確認できなかったとする。この巡査部長は懲戒免職となった。

  ⑤、和歌山県警

   ・和歌山県警刑事企画課警部補(44)がヤクザに捜査情報を漏洩し、また、刑事企画課長(56)と機動捜査隊長(55)がヤクザから接待を受けていた。刑事企画課長は地方公務員法(守秘義務)違反の疑いで書類送検し懲戒免職となり、刑事企画課長と機動捜査隊長は減給処分となり依願退職をした。

  ⑥、福岡県警

   ・福岡県警東署刑事2課の警部補(49)が、福博会の関係者に捜査情報を教えたり、平成24年(2012)2月頃には工藤會の関係者に事件を解決する方法を助言したりし、その見返りに計数十万円を受け取っていた。この警部補はパチンコなどの遊興費が原因で借金を抱えており、金に困っての犯行であった。この警部補は懲戒免職となった。

   ・福岡県警の関係者は福岡県警と工藤會の癒着について、「本部や所轄の中にはそれまで、工藤會とズブズブの関係やった幹部や捜査員がたくさんおった。そん証拠に、工藤會が小倉で大暴れしとった12年の2月にも、福岡東署の警部補が、工藤會の関係者に情報漏らして、カネもろうて(収賄容疑で)パクられとったやろが。また、野村(工藤會総裁)を殺人でパクった時に、樋口(本部長)さんが会見で、『工藤會の壊滅に向け、不退転の決意で臨む』とか話しとったが、あれをテレビで見た知り合いの所轄の署長は『とんでもなか。これ以上、あいつらを追い詰めたら、返り血浴びるばい』とビビっとった。逮捕後、野村が(取り)調べに、(過去に)複数の(県警)幹部に数千万(円)単位の現金を渡したことを仄めかしとるという話もあって、実際に監察も動いとる」とする。

  ⑦、長崎県警

   ・長崎県警の県南の警察署勤務の巡査部長(30歳代)が、令和元年(2019)5月から令和2年(2020)8月の間、ヤクザ1人を含む知人5人に対して、捜査情報を計14回漏洩させた。この巡査部長は停職6ヶ月となり、依願退職した。

  ⑧、懲役太郎

   ・懲役太郎さんも警察とヤクザの癒着の話をされています。



  ⑨、HOMIE KEI

   ・HOMIE KEIさんのヤクザと警察の癒着の話は面白いです。昔の警察は今とは比べ物にならないくらい無茶苦茶ですね。



  ⑩、竹垣悟

   ・竹垣悟氏も、「ヤクザと警察はコインの裏表」と指摘されています。


2、六神抗争でヤクザ情報をよく収集したのは兵庫県警と大阪府警

 (1)、意義

  ・警察とヤクザの癒着は、一線を越えれば犯罪が成立したり懲戒免職となったりしますが、警察はヤクザと「癒着」しないと情報収集ができません。六神抗争でヤクザ情報をよく収集したのは、五代目山口組時代から山健組と「癒着」している兵庫県警と、その兵庫県警と「犬猿の仲」とされる大阪府警でした。

 (2)、実証

  ①、兵庫県警

   ・警察庁幹部は「ダントツなのはやはり地元の兵庫(県警)。特に神戸(山口組)に強く、幹部連中の動きをガッチリ押さえている。兵庫によると、分裂直後の8月27日午前には、組対局(組織犯罪対策局)の幹部が、神戸の井上(邦雄・組長)、池田(孝志・舎弟頭)、正木(年男・総本部長)の3人と接触。離脱に至る経緯や、今後の方針について3人から直接聞き取っている。(中略)この兵庫の報告で、警察庁は27日時点で、分裂の事実を確認することができた。その後も兵庫からは、神戸に関する確度の高い情報が入ってきている」とする。

  ②、大阪府警

   ・平成27年(2015)8月27日に六代目山口組は分裂したが、7月20日時点で極心連合会の関係者から六代目山口組の分裂情報を一番最初に入手したのは大阪府警であった。

  ③、愛知県警

   ・警察庁幹部は「兵庫、大阪に比べて精彩を欠いているのが、弘道会を抱える愛知(県警)だ」とします。その理由は「やはり『ブルーグループ』の一件が大きいのだろう。あの事件の前まではまだ、愛知から(弘道会に関する)情報が上がってきていたが、事件後はさっぱり。癒着がなくなった代わりに情報がとれなくなったということだろう」として、「警視庁のほうがまだ愛知より(弘道会に関する)情報を上げてきている」と、地元の愛知県警よりも東京の警視庁の方が弘道会に対する情報収集能力が高いとする。他方、愛知県警OBは、「ウチは弘道会の情報を取れないのではなく、取っても(警察庁に)上げないだけなんだ」とする。

  ④、福岡県警

   ・福岡県警はメディアに、浪川睦会(現・浪川会)が神戸山口組に参加すると吹聴した。浪川睦会は神戸山口組に参加しなかったので、この情報はガセネタであった。この汚名返上に福岡県警の情報係は全国を飛び回り、府中刑務所に収監されていた六代目山口組若頭・髙山清司にも面会に行った。

3、「捜査」と「癒着」の境界線

 (1)、警察幹部
  
  ・かつて、神戸県警の警察官が協力者に居酒屋や風俗店で接待を受けて問題となった事件について、神戸県警の幹部は「協力者との付き合いが大事にされたのは昔の話。今は危険を冒してまで協力者との付き合いを求められているわけではない」と発言しましたが、この発言があった平成25年(2013)以降もヤクザとの「癒着」は絶えないので、そう簡単なものではないのでしょう。

 (2)、現場の警察官

  ・北海道警察元警部の稲葉圭昭氏は「警察は、幹部と現場で考え方がまったく違う。幹部たちは実績を上げられれば何でもいいと考えているが、捜査とはそんなに簡単なものじゃない」とし、「現場はヤクザと接しているうちに取り込まれて来」るとします。ヤクザから金銭をもらったり接待をうける目的で捜査情報を流す警察官は論外ですが、ヤクザが欲しい捜査情報を流す代わりに警察が欲しヤクザ情報を入手してくる警察官は、ある意味職務熱心なのかもしれません。

 (3)、微罪逮捕

  ・令和3年(2021)2月、六代目山口組三代目弘道会若頭・野内正博氏が大阪府警に逮捕されました。その容疑は、車検の際にすでに亡くなってる男性の名義で申請したという有印私文書偽造・同行使という微罪です。当然、野内氏が自身が乗ってる自動車の車検など関知しているわけはありませんが、野内氏は今のヤクザ業界の中心にいる人物ですし、大阪には野内組の勢力が強くなっているので、情報収集も逮捕の目的だったのでしょう。ヤクザと警察との「癒着」が絶たれると、このような微罪逮捕が増えるのかもしれません。

 cf.警察が微罪逮捕する意味について、元山口組顧問弁護士の山之内幸夫氏は、「情報収集」だけではなくヤクザ組織に対する「けん制」でも使われると解説されています。例えば、令和4年(2022)9月9日に神戸山口組、池田組、絆會の三社連合が結成されました。これに対して愛知県警は六代目山口組三代目弘道会や司興業が報復をするのではないかと「けん制」の意味で、これらの組織の組員合計8名をETCカード詐欺で逮捕をしました。



<参考文献>

「山口組分裂と警察の野望」(『山口組 分裂抗争の全内幕』(西岡研介他、宝島社、2016))
「暴力団と不適切交際 - 警部補らを懲戒免職【県警】」(奈良新聞20100521)
「福岡県警警部補、組関係者に捜査情報漏洩か 現金受領の疑い」(日本経済新聞20120721)
「暴力団組員に捜査情報漏洩 容疑の巡査部長を逮捕」(日本経済新聞20130726)
「暴力団関係者に捜査情報提供の疑い 元巡査部長を不起訴 名古屋地検」(中京テレビNEWS20201031)
「「恩を売れば情報収集できると…」巡査部長、組員らに捜査情報14回漏えい」(読売新聞ONLINE20201211)
「組関係の店で職場懇親会…「癒着」に揺れる県警/和歌山」(読売新聞ONLINE 20140222)
「捜査情報漏洩の疑いで元巡査部長を逮捕 大阪府警」(日本経済新聞20111110)
「島田紳助を引退させた大阪府警「情報漏洩警官」が逮捕される」(週刊ポスト20111202)
「死亡男性の名義で車検申請 容疑で弘道会ナンバー2ら2人逮捕 大阪府警」(産経新聞20210220)
「こうして刑事は売られた 流出する動画、音声、風俗接待の証拠…兵庫県警の“闇”」(産経新聞20130203)
「元刑事が「警察とヤクザの癒着」を告白するとき」(日刊SPA 20141130)

ヤクザvs警察 大阪府警で拷問を受けた時はどうすればよいのか

1、ヤクザを許さない大阪府警

 (1)、大阪府警の拷問

  ①、意義

   ・かつて、大阪府警のヤクザに対する取り調べは無茶苦茶でした。昭和53年(1978)の大阪戦争時に西成署で取り調べを受けた盛力健児氏と、織田絆誠氏が大阪府警のヤクザに対する取り調べの実態を証言されています。

  ②、実証

   ア)、盛力健児

    ・大阪戦争において、昭和53年(1978)8月に三代目山口組山健組若頭補佐・盛力氏率いる盛力会が、松田組系幹部を射殺しました。この事件の取り調べが西成署で行われました。

    「当時の府警の調べって、今とはまったく違うんやから。そりゃもう、メチャクチャ。(被疑者を)ガタガタいわしよる。うちの若い衆も(取り)調べ室でさんざんドツキ回されたり、蹴り倒されたり、なかには道場に連れていかれて、投げられて、締められて、落とされた者もおったんだから。さすがに俺はそこまでされんかったけど、精神的に攻めてきよった。俺を感情的にさせようと毎日のように、三代目の親分への罵詈雑言を浴びせてきてね。(中略)俺、子供の頃に中耳炎患ろうて、右のほうの耳の鼓膜に爪楊枝で突いたみたいなちっちゃい穴、開いとるんです。右の耳がほとんど聞こえんので、人様の話聞くときは、ついついこうやって左耳を向けてしまうんですわ。刑事はそれを知っとるもんやから、左耳ばかり攻めてきよるわけ。突然、そばに来て、左耳の近くで「わっ!」と大声だしてみたりね。それを毎日、朝から晩まで長時間、やられるもんだから頭がガンガンして、意識が朦朧としてくる。ある意味、殴られるより辛いよ。で、そういう調べする時はいつも、俺の腰紐を、調べ室の窓の鉄格子に短く括りつけて、俺が自由に身動きとれんようにしてからやってきよる。」

     西成署は盛力氏に盛力会の解散を迫りました。しかし、解散を肯んじない盛力氏に対して、今度は盛力氏の親分でも三代目山口組若頭で山健組組長・山本健一氏の関与を自白させようとしました。

    「盛力会の解散が無理やと分かった府警は、今度は親父(注・山本健一)に的を絞ってきよった。その日の午後から刑事はデタラメな調書を作り始めたんや。(中略)そこで、俺は一世一代の大芝居を打った。自分で舌を噛んだんですわ。半分は死んでもええという覚悟決めて、半分は演技で。それぐらいの命懸けでせんかったら、当時の府警の取り調べはとまらん。(中略)もう噛んだらあっと言う間ですよ。血が噴き出すと同時に、ぶわあっと舌が腫れるんですわ。刑事も慌ててしもて、「ワシら四課におれんようになる!止めてくれぇ!」言うて、必死に俺の体を起こそうとしてましたわ。」

   イ)、織田絆誠

    ・織田氏は父・織田新一氏から大阪府警での取り調べの対処法を学びました。

    「昔、大阪府警は特に調べが荒っぽかった。取り調べ中に平気で暴行する。そういう場合は「中途半端な真似するな」と怒鳴り、取調室の扉のガラスに自分から頭を突っ込む。ガラスが割れ、額が割れると、顔中、血だらけになる。と、相手はパッと引く。こいつは普通のヤクザと違うなと思わせる。子供時代、バカやから自分でそれを実践しました。取り調べ中に暴行を受け、父親の話を思い出して、「中途半端にやるな!」と叫んで、自分で自分の頬を右手で殴りに殴った。腫れあがり、目がふさがるほど殴ったら、取調官は「やめろ。もうわかった、もうええ」と。」

 (2)、大阪府警の拷問を受けた時はどうすればよいのか?

   ・盛力氏は舌を噛み、織田氏は腫れあがるくらい頬を殴る。自傷行為をすると大阪府警の拷問は終わったようです。

 (3)、特別公務員暴行陵虐罪

  ①、特別公務員暴行陵虐罪

   ・刑法には特別公務員暴行陵虐罪があり、警察官の「被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は凌辱若しくは加虐の行為」を禁じています。しかし、特別公務員暴行陵虐罪として警察官が逮捕されたり、逮捕されて起訴される率は異常に低いそうです。

  ②、なぜ特別公務員暴行陵虐罪で逮捕・起訴されないのか

   ・安田雅企氏は、「極道さんたちに、叩かれて当たり前という考えが強い。それを警察は知っていて、安心してリンチしているところがある」と指摘します。つまり、ヤクザは、警察から拷問をうけることは当たり前であるという考え方が強いそうです。よって、ヤクザが警察官を訴えるということは少ないといいます。

   ・検察官は、特別公務員暴行陵虐罪は公務員が職務熱心のあまりに犯す犯罪として認識しているので、起訴をせずに寛大な扱いがなされています。

   ・ヤフー知恵袋やYoutubeのコメント欄を見ても、警察官がヤクザに強い態度に出ると、警察はヤクザに怯まずによく働いてると肯定的にみる人が多く、警察を非難する声はほとんどありません。

 (4)、補足

  ①、竹垣悟氏
  
   ・竹垣悟氏が、義竜会若頭・大山健ニ氏が大阪南署で取り調べ中に変死した話をされています。


  
  ②、山之内幸夫氏

   ・山之内氏も大阪府警の取り調べについて語っています。生々しいです。


2、メディアに出演するアウトローを許さない大阪府警

 (1)、意義

  ・大阪府警は、アウトローがメディアに出演することを許しません。大阪のアウトローの方は、不用意にメディアに出演しない方がいいですね。

 (2)、実証

  ①、拳月グループリーダー・拳月

   ・令和元年(2019)7月に、NHKスペシャルの「半グレ 反社会勢力の実像」に拳月氏が出演しました。しかし、その3ヶ月後の同年10月に大阪府警は強制性交の疑いで拳月氏を逮捕しました。

  ②、拳月グループナンバー2・テポドンこと吉満勇介氏(本名籠池勇介氏)
  
   ・令和元年(2019)7月のNHKスペシャルの「半グレ 反社会勢力の実像」に出演された拳月グループナンバー2・テポドンこと吉満勇介氏(本名籠池勇介氏)も、その1か月後の同年8月28日に大阪府警に恐喝の疑いで逮捕されました。丸山ゴンザレスの裏社会ジャーニーに出演されていますが、逮捕について大阪府警の警察官に「お前がテレビにでるからだぞ」と言われたそうです。やっぱり、大阪府警はメディアに出演するアウトローを許しません。


  ③、二代目東組四代目関谷組組長・木村雄治

   ・令和元年(2019)8月13日に、AbemaPrimeの「現役ヤクザ組長に密着取材 令和に暴力団は撲滅できるのか?」に木村氏が出演しました。しかし、その翌日に大阪府警は木村氏を覚せい剤取締法違反容疑で逮捕しました。

  ④、元山口組顧問弁護士・山之内幸夫

   ・山之内氏も平成3年(1991)2月、大阪府警に逮捕された時に、「目立っているのがいかんのや。おとなしくしとったらワシらでさえも暴力団がなくなるとは思ってないんや。それを襲名披露とかなんとかいってチャラチャラチャラチャラ目立ってるのがいかんのや」と言われたそうです。


3、反社会的な行為をする青年を許さない大阪府警

 (1)、令和の柳川組・迷惑系Youtuberへずまりゅう

  ①、三代目山口組二代目柳川組組長・谷川康太郎

   ・谷川氏は「社会からはじき出され、何かをして生きねばならない無数の人間がいる。やがてそのなかからリーダーが生まれて、グループの核ができ「組」が形成される」と柳川組の形成を説明しました。そして、「カネも地位も名誉もなかった、ソーニャ(注、『罪と罰』のラスコーリニコフの恋人)のような女性もいなかった。信仰する余裕もなかった。しかし、そういう状態のなかで「なにもないこと」の強さを身をもって知った」と柳川組の強さの秘訣を語りました。

  ②、令和の柳川組・迷惑系Youtuberへずまりゅう

   ・へずまりゅうさんもTwitterで「まだまだ兵士が足りん 俺と一緒にとある人物に凸撃してくれ!50~100人は欲しい!犯罪者で前科者とか大歓迎!犯罪者の集団を作ろうや!俺みたいにいつ捕まってもいい、いつ殺されてもいいって奴らが欲しい!無敵の軍団を作って世に知らしめないか?お前らが輝くのは今じゃないか?」(令和2年(2020)6月21日)とツイートしています。まさに柳川組の思想です。へずまりゅうさんも柳川組のごとく全国を暴れまわりました。

 (2)、逮捕

  ・令和2年(2020)7月、愛知県岡崎市のスーパーで会計前の魚の切り身を食べた窃盗容疑で、愛知県警岡崎署が逮捕しました。また、コロナに感染していたへずまりゅうさんが岡崎署の警察官や留置施設にいた容疑者などにコロナを感染させてしまいました。

  ・同年10月、大阪市内の衣料品店で経営者に罵声を浴びせた威力業務妨害と信用毀損の容疑で、大阪府警南署が逮捕しました。この時は大阪府警の警察官に悪態をついていたことから大阪府警は激怒し、マスコミにわざと晒すようにして南署へ送検したそうです。

  ・同年10月、東京都渋谷のスクランブル交差点前で布団を敷いて寝そべり通行を妨害した道路交通法違反容疑で、警視庁渋谷署が逮捕しました。

 (3)、更生したのか?

  ・保釈後のへずまりゅうさんはLINEで、「SNSの世界からへずまりゅうは抹消しました。今後は原田将大として真面目に生きていくので更生の邪魔はしないでください。私は社会の為に頑張ります。迷惑系という活動に限界を感じました。メンタルもズタボロです」と語りました。大阪府警で何があったのでしょうか。驚きの漂白力です。

 cf.なお、週刊実話WEB「へずまりゅう、ヤクザから集団リンチ!“迷惑系ユーチューバー”の悲惨な末路」によると、へずまりゅうさんは、兵庫県神戸市の歓楽街・福原付近で、暴力団関係者から集団リンチを受けて金を奪われて引退を表明したそうです。

 (4)、やっぱり更生せず

  ・へずまりゅうさんのTwitterによると、控訴するそうです。控訴は国民の権利ですのでガンガン争えばいいとは思いますが、大阪府警がアウトローに狂暴になる理由もわかります。

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<参考文献>

『鎮魂 ~さらば、愛しの山口組』(盛力健児、宝島社、2013)
『山口組三国志 織田絆誠という男』(溝口敦、講談社、2017)
『浜松一力一家始末記』(山平重樹、エスエル出版会、1988)
『刑法各論講義第3版』(前田雅英、東京大学出版会、2002)
「ジーンズ29本に1.2億円分の覚醒剤 組長が密輸容疑」朝日新聞DIGITAL 20190816 
「元K-1出場格闘家「拳月」が強制性交容疑で逮捕」 日刊スポーツ 20191025日
「引退報道のへずまりゅう LINEからにじみ出る「変わらぬ本質」」FRIDAY DIGITAL 20210116
「迷惑ユーチューバー・へずまりゅうを〝さらし者送検〟 東京とはひと味違う大阪府警」東京スポーツ 20201020
「ユーチューバー「へずまりゅう」関連の感染7人 愛知県」朝日新聞DIGITAL 20200720
「へずまりゅう、ヤクザから集団リンチ!“迷惑系ユーチューバー”の悲惨な末路」週刊実話WEB 20210502 

ヤクザvs警察 熊本県警ヤクザ拷問事件

 作家の故野坂昭如さんが「朝まで生テレビ!  激論!暴力団はなぜなくならないか」(1992年2月28日放送)の中で「制服が好きなのは警察になって、そうじゃないとヤクザになる」とおっしゃっていたように、かつて警官になるのとヤクザになるのは同じような社会階層でした。今回は、『浜松一力一家始末記』(山平重樹、エスエル出版会、1988)より、熊本県警がヤクザを拷問した事件をまとめます。

  参考)、「朝まで生テレビ!  激論!暴力団はなぜなくならないか」のメモ  警察とヤクザは根は一緒

1、事件

 熊本県警vs道仁会

2、経過

 (1)、山道抗争中の警官誤射事件

  ・昭和61年(1986)暮れ頃から、三代目山口組伊豆組、同稲葉一家と道仁会との間で抗争が勃発した。この中で、同年12月27日、稲葉一家島村組事務所前で警戒中の熊本県警の警部補を、道仁会組員が誤って銃撃して重傷を負わせた。この事件に熊本県警が激怒した。

   参考)、ヤクザ抗争史 山道抗争

 (2)、熊本県警ヤクザ拷問事件

  ①、拳銃を突き付けた任意同行

   ・熊本県警は、抗争の指揮をとっていた道仁会古賀一家のナンバー2である杉本生司を、まだ逮捕状が出ていなかったので任意同行という形で、所轄の玉名署へ連れて行った。この時玉名署員は、杉本に拳銃を突き付けて「キサマ、殺してやるゾ」と脅したという。

  ②、杉本への拷問

   ・熊本県警は、玉名署、熊本北署、東署、南署、荒尾署がチームワークをとり、杉本を背中が壁のコンクリートの床の上に正座させ、靴先で蹴ったり、殴ったりと暴行を繰り返し、三時間半にわたって拷問をした。

  ③、笠原舎弟頭への拷問

   ・熊本県警はさらに、道仁会古賀一家の笠原舎弟頭へも拷問を加え、殴られて両眼をつぶされた笠原は手術をして失明を食い止めた。
  
  ④、森川補佐への拷問
   
   ・玉名署は、道仁会古賀一家の森川補佐が否認をし続けていることが気にくわないとして、田原坂へ連れていき、田原坂前公園前の広い駐車場で、見張りを立たせた上で、口中に拳銃を突っ込み、暴行を加え、倒れると向う脛を警棒で乱打し、約2時間半にわたって拷問を加えた。

3、結果

 (1)、史上初ヤクザが警察を訴える

  ・拷問の報を聞いた道仁会会長・古賀磯次は激怒した。よって、昭和62年(1987)年6月25日、道仁会は史上初めて熊本県警を告訴した。さらに、警察署間で連携をとっての計画的、組織的な暴行は県警本部長しかできないということで、県警本部長も告訴した。

 (2)、辞任

  ・熊本県警は、定期移動という形で県警本部長が退き、拷問が暴露された玉名署長も辞任をした。

4、補足 大阪府警

 (1)、六代目山口組二代目弘道会浜健組→大阪府警

  ・平成19年(2007)、六代目山口組二代目弘道会浜健組事務所へ大阪府警が家宅捜索をした際に、警官が留守をしていた組員3人に対して、「開けんかい、われー、なめとんか、コラ!」と怒鳴りながらドアを開けさせた上、胸ぐらをつかんで外へ引きずりだし、組員らが路上に引き倒されてうずくまったところ、「大げさにすんな、ボケー!」と、胸や脚なども蹴り、それぞれ組員に1から2週間の怪我を負わせた。さらに、組員の1人が応接間に連れ戻されると既に部屋にいた警官に尻をけられ、正座をさせられた。これに対して浜健組は、大阪府に対して300万円の損害賠償を求める民事訴訟を提起した。

 (2)、神戸山口組四代目山健組→大阪府警

  ・平成27年(2015)、六代目山口組から神戸山口組が分裂をした。平成28年(2016)12月16日、神戸山口組四代目山健組本部を大阪府警が家宅捜索しようとしたところ、山健組組員がドアを開けるのが数分遅れたということで、警官が組事務所の防弾ガラスをバールで叩き割ろうとしたり、組員に殴る蹴るの暴行を加える事件が起こった。これに対して山健組は、特別公務員暴行陵虐罪で刑事告訴をした。



 (3)、大阪府警の家宅捜索

  ・九州や大阪などアウトローが荒っぽい地域では、警察も荒っぽくなるようです。山口組側で対応しているのは、大原組組長の故大原宏延氏でしょうか。



 続いて、令和元年(2019)に解散をした極心連合会。



 続いて、六代目山口組三代目弘道会福島連合。大阪府警、北海道へ行くです。



 六代目山口組の総本部と神戸山口組の本家がある兵庫県警ですが、警察もヤクザも慣れきっていて粛々と進めています。

  

 栃木県警の家宅捜索は、大阪府警と同じ警察とは思えないくらい丁寧です。



 比較してみると、大阪府警が煽るから無用なトラブルが起こってるのかもしれませんね。


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