1、意義
 
 ・典型的なエセ同和行為に、中央官庁や地方自治体など行政機関と掛け合って、農地転用や市街化調整区域の地目変更など、土地開発の許認可をとり、開発業者に橋渡しして、莫大な斡旋料をせしめる、というものがあるが、この事件はこの典型的なエセ同和行為の事件である。

 参考)、日本部落史(27) エセ同和行為

2、登場人物

 (1)、開発業者

  ①、開発業者

   ・幸生総合建設(事実上の経営者=会津小鉄会系寺村組内岩丸組組長岩丸幸生、社長=福田精二)

   ・奈良不動産

  ②、鉄砲玉

   ・会津小鉄会系寺村組内岩丸組組員の三名

  ③、その他

   ・会津小鉄会系寺村組の初代組長の実子でルポライターの橋村学

 (2)、同和関係者

  ・一和会系加茂田組内岬組京都支店長であり有限会社石増総業代表のI

  ・西日本同和事業組合会長であり小島商事の経営者でもある小島明

  ・元暴力団員であり西日本同和事業組合副会長のT

 (3)、京都市役所

  ・都市計画課課長

  ・開発指導課課長

  ・風致課課長

3、経緯

 (1)、岩倉グリーンタウンの開発計画

  ・左京区岩倉長谷町の山際に開発されている岩倉グリーンタウン用地を、幸生総合建設と奈良不動産が開発する計画をたて、1985年3月までに22億1500万円の融資をうけた。京都市は一部市街化調整区域にかかっていた部分を市街化区域に編入し、1985年9月24日に開発許可を出した。

 (2)、反対運動

  ・この開発により土砂崩れの恐れがあるとして、地元の自治会が反対運動を起こす。この反対運動との交渉過程において、造成の際に土砂埋立用に隣接の山林も買収しなければならなくなった。よって、幸生総合建設と奈良不動産は、この新たに買収した部分も市街化調整区域から市街化区域に編入することを京都市に求めようとした。

 (3)、同和関係者の登場

  ・幸生総合建設と奈良不動産は、京都市に対する働きかけをするために、橋村学と一和会系加茂田組内岬組のIに仲介してもらい、西日本同和事業組合長の小島明と同副会長のTを紹介してもらった。

 (4)、同和関係者と京都市の交渉

  ・小島明とTは京都市役所へ乗り込み、都市計画課長、開発指導課長、風致課長相手に、「あの土地を開発して同和関係の者に安い住宅を提供したいから、市街化調整区域から市街化区域に編入してくれ」と何度も何度も押しかけては交渉をした。その結果、三課長から「次回の線引きの際には市街化区域に入れます」という言質をとることに成功した。

 (5)、成功報酬をめぐる争い

  ・小島明やTは京都市役所との交渉が成功したら、1億円をもらう約束であった。しかし、幸生総合建設の福田社長も、実質的なオーナーの岩丸幸生組長も支払ってくれなかった。

 (6)、射殺事件

  ・1億円の支払いを巡って京都市伏見区のレストランで話し合うこととなる。しかし、この場で隠れていた会津小鉄会系寺村組内岩丸組の鉄砲玉3人によって、一和会系加茂田組内岬組京都支店長のIと西日本同和事業組合副会長のTが射殺された。

 (7)、判決

  ・鉄砲玉となった3人は自分達の意思で偶発的に行ったと主張したが、京都地裁は「岩丸組の関係者が被告人両名にIの殺害を命じ、被告人両名がその指示通り本件を実行した疑いが極めて濃厚」であるとして、懲役20年を言い渡した。

<参考文献>

 『京都に蠢く懲りない面々』(講談社、2004、湯浅俊彦他)