1、西中島駐車場事件
(1)、意義
・大阪市の外郭団体「大阪市開発公社」が経営する大阪市淀川区にある「西中島駐車場」の管理委託業務をめぐり、財団法人飛鳥会理事長で、部落解放同盟飛鳥支部長の小西邦彦が業務上横領と詐欺の容疑で、2006年5月に逮捕された事件。
(2)、経過
①、御堂筋建設によってできた高架下のトラブル
・1970年の大阪万博に向けて進められた新大阪駅周辺の開発、区画整理にともなって新御堂筋が建設され、その高架下に空き地ができた。やがて、この空き地は露天商が勝手に屋台車置き場として使ったり、ゴミ捨て場にもなっていたことから、周辺住民から苦情が出た。
②、駐車場の建設計画
・この周辺住民と大阪市とのトラブルに介入したのが小西であった。小西は中高齢者雇用ならびに老人福祉対策の一環として、新御堂筋の高架下を駐車場として利用することを提案し、大阪市はこれを認めた。
③、飛鳥会に有利な管理委託契約
・大阪市と大阪市開発公社が合計2960万円を負担して、西中島駐車場は建設され、1974年にオープンした。そして、管理委託先となったのが小西が理事長をしている財団法人飛鳥会であった。西中島駐車場は同和地域ではないにも関わらず、道路占有料と設備費使用料を支払うだけで駐車場料金の納入はしなくてもよいという有利な条件で、飛鳥会は駐車場の経営の仕事を請け負ったわけである。
④、横領された飛鳥会の金
・年間約2億円と言われる西中島駐車場の売り上げは、三和銀行淡路支店に開設された「財団法人あすか会新大阪ガレージ代表理事小西邦彦」名義の口座に振り込まれ、1989年から2006年までの間にこの口座から三和銀行の小西の個人口座に合計5億1500万円が振り込まれていた。これによって、小西は業務上横領容疑で逮捕されたのである。
2、飛鳥解放会館(その後大阪市立飛鳥人権文化センター)土地転がし疑惑
(1)、意義
・大阪市が飛鳥会を同和特別扱いしたことによって、土地ころがしや金融機関からの融資に大阪市自らが手を貸していた事件。
(2)、経過
・1965年、大阪市建築局が飛鳥解放会館の現在の敷地を住宅用地として使うために取得した。
・1971年6月、飛鳥会所有の別の用地が大阪市土木局の土地改良事業にともなう道路拡張事業予定地に入ったため、土地交換の対象となった。これにより飛鳥会はこの地の所有権を大阪市から取得した。公共用地買収は金銭補償が原則であるが、飛鳥会は同和特別扱いとして土地交換が行われた。
・1971年9月、この土地は飛鳥会から山口組系金田組の金田三俊組長の内縁の妻である丁順子に所有権が移転された。
・1973年4月、丁順子が所有している段階で、この土地に解放会館を建設する計画を大阪市が立てた。
・1974年4月、丁順子が所有している段階で、解放会館の建設工事が着工した。
・1974年7月、この土地に、金田三俊組長が韓国系の金融機関である大阪商銀からうけた3000万円の融資を担保するために抵当権が設定された。
・1975年3月28日、この土地の隣にある大阪府の所有地(当時の価格で1億円以上と言われている)と土地交換ということで、丁順子から大阪市に再びこの土地の所有権が移転した。これも金銭補償ではなく同和特別扱いとして土地交換が行われた。よって、丁順子は土地ころがしをした上で、1億円以上の土地を取得したことになる。小西はさらに、この土地交換で手に入れた元大阪府の所有地を大阪市に買い上げるように要求をしていた。
・1975年3月31日、飛鳥解放会館が完成した。この日に、金田組長の抵当権も抹消されている。
3、パール温泉とあすか温泉
(1)、意義
・パール温泉とあすか温泉は飛鳥会が運営する同和風呂である。この二つの同和風呂に対する大阪市の補助金は、1996年度~2004年度までで約6億円以上であった。
(2)、パール温泉の疑惑
・飛鳥会が運営していたパール温泉が、火災で全焼をした。次の年に再建されたが、その水道代は大阪市内の他の同和風呂が2分の1の補助なのに対して、パール温泉は3分の2の補助を受ける特別扱いを受けた。
(3)、あすか温泉の疑惑
・あすか温泉が1996年~1997年にかけて2億4000万円の補助金で建て替えられた際、温泉の上の二階、三階に勝手にマンションを建設し、無届で経営して、その家賃を飛鳥会口座に振り込ませていた。
4、柴島浄水場事件
(1)、意義
・小西は、野間工務店が柴島浄水場の脱水汚泥の搬出工事を請け負うように圧力をかけていた。また、柴島浄水場のろ過池跡の埋立工事の設計変更を水道局に繰り返しさせ、当初953万円だった工事費を8437万円と9倍に膨らませて受注した。1974年から1980年までの7年間で、水道局の工事を8億1500万円も受注していた。
(2)、野間工務店とは
・野間工務店とは、小西が経営する建設会社である。しかし、看板だけのペーパーカンパニーであり、受注後はすぐに他の業者に丸投げしていた。1985年に廃業するまでの5年間で、大阪市の工事を21億円請負っていた。
5、出入橋ビル事件
(1)、意義
・大阪市が桜島守口線の拡幅用地として、大阪市北区堂島の出入橋ビルを買収した。この時、小西は同ビルに飛鳥会が入居していないにもかかわらず入居していたことにして、大阪市から立退き補償金を受け取った。
(2)、その後の出入橋ビル
・出入橋ビルはその後、経緯は不明であるが小西が理事長を務める社会福祉法人「ともしぶ福祉会」の所有物件となった。しかし、飛鳥会事件が発覚するまで、旧山口組系柳川組の残党のたまり場となっていた。
6、市有地私物化事件
(1)、意義
・大阪市が飛鳥地区協に無償で貸していた吹田市新芦屋下の土地に、部落解放同盟飛鳥支部執行委員で野間工務店社長であった小西の一の子分である伊藤久重が、自宅を建てたり、土地を抵当に入れて金融機関から融資を受けたりしていた事件。
(2)、経過
①、飛鳥地区協に無償で貸し出される
・大阪府が所有していた東淀川区にある府営崇禅寺住宅を含む飛鳥地区の土地について、大阪市は同和事業を計画した。大阪市は吹田市新芦屋下の土地を6億7000万円で取得して、この土地と飛鳥地区の土地を交換しようとしたがうまくいかず、結局吹田市新芦屋下の土地は飛鳥地区協に無償で貸し出され、菜園として使われることとなった。
②、私物化された市有地
・この吹田市新芦屋下の土地を菜園として整備するために、公金計3000万円を使って、野間工務店が請負い、農園全体を整備して休憩室も作られた。しかし、1974年にこの土地に財団法人飛鳥会名義で建築確認が申請されて、建物が建てられ、伊藤久重執行委員が住宅として住みだした。1980年にはこの建物の登記名義も伊藤に変更された。さらに、休憩所も伊藤名義に登記され、この自宅と休憩所に抵当権を設定して1500万円の融資まで受けていた。
(3)、飛鳥地区の土地について
・大阪市が所有する吹田新芦屋下の土地と大阪府が所有する飛鳥地区の土地との交換は、2005年4月になってようやく成立した。その後、この飛鳥地区の土地は大阪市から小西が理事長を務める社会福祉法人「ともしび福祉会」に無償で提供され、小西は2005年12月にここに生活支援ハウスをオープンさせた。
7、小西と福祉ビジネス
(1)、小西と福祉ビジネス
・小西は、1981年に社会福祉法人「ともしび福祉会」を設立した。そして、大阪府有地に「ともしび保育園」を、1994年には高槻市に特別老人ホーム「高槻ともしび苑」を、1995年には「飛鳥地区健康管理センター」を、1996年には特別老人ホーム「福島ともしび苑」を、2005年には飛鳥地区に「生活支援ハウス」をオープンさせた。
(2)、特別な便宜を図った大阪市
・2005年度、「ともしび福祉会」は大阪市から2億円の補助金を受けるなど、他の社会福祉法人とは比べものにならないくらい大阪市から便益を受けた。他方、「飛鳥地区健康管理センター」の初代所長は、当時の大阪市長であった関淳一と縁のある女性医師が天下っていた。
8、大阪市立飛鳥人権文化センター(旧飛鳥会館)に関連した疑惑
(1)健康保険証詐取事件
・小西は、健康保険証を持たない飛鳥会関係者、飛鳥支部関係者、小西の親族あるいは知人に健康保険証を取得させる目的で、1976年ごろから大阪市立飛鳥人権文化センター(旧飛鳥解放会館)職員に指示して、飛鳥人権協会で働いていることにして、健康保険証を作らせていたということで、健康保険証の詐取容疑で逮捕された。
(2)、人権協会職員の給与ピンハネ疑惑
・小西は、人権文化センターに事務所を置く飛鳥人権協会の職員の給与をピンハネしていた。そのピンハネ額は5年間で2400万円以上にのぼった。
<参考文献>
『京都と闇社会』(宝島社、2012、一ノ宮美成+湯浅俊彦+グループ・K21)
<参考文献>
『京都と闇社会』(宝島社、2012、一ノ宮美成+湯浅俊彦+グループ・K21)