1、意義
(1)、意義
・国の同和事業は、平成14年(2002)の「地域改善対策特別事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」(地対財特法)の失効によって終了した。これにより、小集落地区等改良事業、進学奨励金、職業訓練のための給付金などは全廃され、一部の事業は同和地区だけを対象としない「一般対策」に切り替わった。
(2)、運動団体
・同和事業の終了から2年後の平成16年(2004)、共産党系の全国部落解放運動連合会(全解連)が全国地域人権運動総連合(人権連)に改組された。部落解放同盟、全日本同和会、自由同和会はそのまま残った。
2、同和事業が終了した理由
(1)、経済格差の解消
・同和事業により経済格差が解消され、同和地区内外での婚姻が行われるなど差別意識も解消した。
(2)、誰が部落民か把握が困難
・人口移動や都市化によって同和地区・同和関係者に対象を限定した施策が事実上困難となった。
(3)、予算不足
・バブル崩壊後の不景気によりもはや同和事業にかかる莫大な費用を負担する余裕がなくなった。
3、その後の同和対策事業
(1)、同和事業から「一般対策」になって成功した事例
・同和対策事業で行われた「小集落地域等改良事業」は、平成9年(1997)に創設された同和地区を対象としない「小規模住宅地区等改良事業」へ代わった。この制度は平成16年(2004)の新潟県で発生した中越地震、平成23年(2011)に発生した東日本大震災など、被災地の復興事業に活用されるようになった。
(2)、事実上残された同和事業
①、厚生労働省
・隣保館等に関する事業は対処を同和地区に限定しないで継続された。しかし、事実上同和施設であり続けている。
・ハローワークでは、同和地区住民に対して失業手当を上乗せ支給されている。
②、地方自治体
・同和地区の固定資産税を減免したり、同和地区の大学進学者へは進学奨励金が支給されたりしている地方自治体はまだ残っている。
(3)、同和事業終了後に活発になった事業
①、相談事業
・同和事業が行われていなかった東京都墨田区では、「同和相談事業」が行われており、部落解放同盟東京都連墨田支部に委託費用が支払われている。
②、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律(人権教育啓発推進法)」
・平成12年(2000)に制定された「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律(人権教育啓発推進法)」には同和事業の代替という性質があり、企業や学校向けの部落問題についての講演などの事業に、国費や地方自治体の予算が投じられている。
<参考文献>
『部落問題入門』(全国部落解放協議会、示現舎、2020)