1、在日朝鮮人の日本定住志向

 (1)、在日朝鮮人の日本定住志向

  ・戦後の一時期、在日朝鮮人は朝鮮半島へ帰還をして新国家を建設することが望みであった。しかし、1970年代以降から朝鮮半島へ帰還するよりも日本に定住したいという思いが強くなっていく。よって、在日朝鮮人達は日本での生活を確かなものにするために、日本政府が在日朝鮮人に課したさまざまな制度的差別の撤廃を求めるようになった。

 (2)、朝鮮総連の対応

  ・朝鮮総連はいまだに「南朝鮮革命の遂行」「祖国の統一」「チュチェ思想の確立と金日成主席への忠誠」など、北朝鮮の政策遂行に全力をあげ、在日朝鮮人が日本社会の中で直面している生活面での改善要求とは遊離した政治活動をしている。

2、地方公務員の国籍条項撤廃要求

 (1)、地方公務員の国籍条項撤廃要求

  ・1980年代以後、日本への定住志向が強くなるにつれて、安定した地方公務員を求める在日朝鮮人も多くなってきた。しかし、地方公務員の採用には国籍条項があるので、これを撤廃する要求をするようになった。

 (2)、朝鮮総連の反応

  ・国籍条項撤廃後初めて地方公務員の採用試験に合格した在日朝鮮人の青年を、朝鮮総連の副議長は「売民族的行為」と非難をした。

3、在日朝鮮人の朝鮮学校離れ

 ・定住志向が強くなった在日朝鮮人は、民族教育よりも日本社会で適応するための教育を欲するようになる。金日成・金正日親子に対する忠誠心教育よりも、基本的人権や民主主義的な理念を教える教育を求め、朝鮮学校へその子女を送らなくなった。朝鮮学校の生徒数は1975年には3万1200人だったのが、2012年段階では5000~6000人まで減少したと言われている。

4、定住外国人の地方参政権

 (1)、定住外国人の地方参政権

  ・定住志向が強くなった在日朝鮮人は、自分達が定住する地域に自分達の意思を反映させるために地方参政権を求めるようになり、1995年には在日韓国人達が地方参政権を求める裁判において、傍論ではあるが定住外国人の地方参政権を「専ら国の立法政策にかかわる事項」という最高裁判所の判決が下るに至っている。

 (2)、朝鮮総連の反応

  ・在日朝鮮人の日本人への同化を促進させるであるとか、日本の内政干渉になるなどの理由によって、朝鮮総連は地方参政権要求に激しく反対をした。

5、住民投票
 
 (1)、住民投票

  ・1990年代から、各自治体は原子力発電所の建設や産業廃棄物処理施設の建設など地域住民の命と生活にかかわる重要な問題を、住民投票によって決定していく傾向が強くなった。しかし、この住民には在日朝鮮人は除外されていた。よって、在日朝鮮人も住民投票に参加させろという要求が強くなってくる。2001年6月の滋賀県米原町の町村合併を巡る住民投票では、定住外国人も「住民」として住民投票を認めるに至り、この後在日朝鮮人にも投票権を与える自治体が続出した。

 (2)、朝鮮総連の反応

  ・原子力発電所建設のような政治色の強い問題に賛否を表明することは内政干渉であるとして、住民投票問題でも反対をした。

<参考文献>

 『朝鮮総連』(金賛汀、新潮新書、2004)