1、意義
・ヤクザは社会から排除された人達の受け皿という側面があります。かつて差別によって在日や同和の人達がヤクザになりましたが、もう一つ差別されている人達がいます。それが障がい者です。そして、ヤクザは障がい者の受け皿でもありました。
2、実証
(1)、極東会四代目桜成会吉村組
①、なぜヤクザになったのか
・『実話マッドマックス』2007年5月号にろうあでヤクザになった方のインタビューが掲載されています。ヤクザになったきっかけについて、「私はこれまで社会的差別を受け、苦しみながら生きてきました。ですが、現在は吉村の親父さん(注吉村光男氏)と新宿で出会い、私らをひとりの人間として扱ってくれて感謝しています。親父さんはいつでも腹を割ってくれるし、その侠気に惹かれましたね。実の親よりかわいがってくれますよ」とします。障がいがあるからということで腫れ物に触るように接せられるのは、人としてのプライドが傷つけられるのでしょう。人間として扱ってもらいたいからヤクザに入ったそうです。
②、ヤクザとしての活動
・ろうあ者がヤクザをやることについて、「特に困ることはありませんよ。強いて言えば電話の対応ができないので、事務所当番ができないことくらいでしょうか。それ以外は一般の組員と変わりません。呼び出し、連絡事項もいまはメールがありますから」と、一般組員と同じように活動していました。
③、ろうあのヤクザは多い
・「ある土地にいったときに、地元の組長からいきなり呼ばれ、ワケも分からず事務所で一方的にシメられました。あとから聞いたら、その土地にも聾唖のヤクザがいたらしく、私はそのヤクザと間違われたんですね」と答えているところから、他にもろうあのヤクザがいたようです。
④、シノギ
・「やはり聾唖には聾唖のいろいろな問題や困ったことがあるようで、彼らはそれを解決したりしてあげてるようなんですね」と、ろうあの方々の問題を解決してあげ、その延長線上で、出資話を持ち掛けて詐欺をしたり、脅して恐喝をして、同じろうあの方々から合計約1億8千万円を奪い取っていました。この事件では、被害者のろうあ者達が、極東会の元会長・松山眞一ら3人に対し、総額約1億9940万円の損害賠償を求めた訴え、約1億9620万円の支払いが認められました。
(2)、住吉会
①、意義
・住吉会にもろうあの組員がおり、何度も恐喝や強要で逮捕されています。
②、シノギ
・住吉会系のろうあの組員が、同じくろうあの高齢男性に「東日本大震災で、自宅や妻が経営する店が津波で流されたからカネを出せ。カネがなければ銀行から引き出してこい。出さないと何回でも来るぞ」と手話を使って脅して、現金150万円を脅し取っていました。その後も、ろうあ者グループで知り合ったろうあの男性に、世話をするように装って近づき、男性の預金を勝手に引き出していたという事件も起こしています。
(3)、山口組系佐伯会
①、意義
・大阪市東淀川区に一時、ろうあ者ばかり数十人で構成する暴力団「佐伯会」が存在していました。
②、シノギ
・ろうあの女性達を手話やメールで脅迫して、合計約480万円を脅し取っていました。
(4)、懲役太郎
・懲役太郎さんが紹介されている、派遣先でダメだったのでヤクザで引き受けた青年は、知的障害もしくは発達障害の方でしょう。
<参考文献>
『実話マッドマックス』2007年5月号
「恐喝:ろうあの組員ら、手話で脅す 容疑で警視庁逮捕」(産経新聞20130605)
「聴覚障害者を手話で脅す 強要疑い組長ら逮捕 警視庁」(産経新聞20181012)
「聴覚障害者を手話で恐喝 元組長に懲役11年 大阪地裁」(朝日新聞20050526)
「聴覚障害者から多額の現金、極東会元会長らに賠償命令」(朝日新聞20160929)