1、ヤクザを許さない大阪府警

 (1)、大阪府警の拷問

  ①、意義

   ・かつて、大阪府警のヤクザに対する取り調べは無茶苦茶でした。昭和53年(1978)の大阪戦争時に西成署で取り調べを受けた盛力健児氏と、織田絆誠氏が大阪府警のヤクザに対する取り調べの実態を証言されています。

  ②、実証

   ア)、盛力健児

    ・大阪戦争において、昭和53年(1978)8月に三代目山口組山健組若頭補佐・盛力氏率いる盛力会が、松田組系幹部を射殺しました。この事件の取り調べが西成署で行われました。

    「当時の府警の調べって、今とはまったく違うんやから。そりゃもう、メチャクチャ。(被疑者を)ガタガタいわしよる。うちの若い衆も(取り)調べ室でさんざんドツキ回されたり、蹴り倒されたり、なかには道場に連れていかれて、投げられて、締められて、落とされた者もおったんだから。さすがに俺はそこまでされんかったけど、精神的に攻めてきよった。俺を感情的にさせようと毎日のように、三代目の親分への罵詈雑言を浴びせてきてね。(中略)俺、子供の頃に中耳炎患ろうて、右のほうの耳の鼓膜に爪楊枝で突いたみたいなちっちゃい穴、開いとるんです。右の耳がほとんど聞こえんので、人様の話聞くときは、ついついこうやって左耳を向けてしまうんですわ。刑事はそれを知っとるもんやから、左耳ばかり攻めてきよるわけ。突然、そばに来て、左耳の近くで「わっ!」と大声だしてみたりね。それを毎日、朝から晩まで長時間、やられるもんだから頭がガンガンして、意識が朦朧としてくる。ある意味、殴られるより辛いよ。で、そういう調べする時はいつも、俺の腰紐を、調べ室の窓の鉄格子に短く括りつけて、俺が自由に身動きとれんようにしてからやってきよる。」

     西成署は盛力氏に盛力会の解散を迫りました。しかし、解散を肯んじない盛力氏に対して、今度は盛力氏の親分でも三代目山口組若頭で山健組組長・山本健一氏の関与を自白させようとしました。

    「盛力会の解散が無理やと分かった府警は、今度は親父(注・山本健一)に的を絞ってきよった。その日の午後から刑事はデタラメな調書を作り始めたんや。(中略)そこで、俺は一世一代の大芝居を打った。自分で舌を噛んだんですわ。半分は死んでもええという覚悟決めて、半分は演技で。それぐらいの命懸けでせんかったら、当時の府警の取り調べはとまらん。(中略)もう噛んだらあっと言う間ですよ。血が噴き出すと同時に、ぶわあっと舌が腫れるんですわ。刑事も慌ててしもて、「ワシら四課におれんようになる!止めてくれぇ!」言うて、必死に俺の体を起こそうとしてましたわ。」

   イ)、織田絆誠

    ・織田氏は父・織田新一氏から大阪府警での取り調べの対処法を学びました。

    「昔、大阪府警は特に調べが荒っぽかった。取り調べ中に平気で暴行する。そういう場合は「中途半端な真似するな」と怒鳴り、取調室の扉のガラスに自分から頭を突っ込む。ガラスが割れ、額が割れると、顔中、血だらけになる。と、相手はパッと引く。こいつは普通のヤクザと違うなと思わせる。子供時代、バカやから自分でそれを実践しました。取り調べ中に暴行を受け、父親の話を思い出して、「中途半端にやるな!」と叫んで、自分で自分の頬を右手で殴りに殴った。腫れあがり、目がふさがるほど殴ったら、取調官は「やめろ。もうわかった、もうええ」と。」

 (2)、大阪府警の拷問を受けた時はどうすればよいのか?

   ・盛力氏は舌を噛み、織田氏は腫れあがるくらい頬を殴る。自傷行為をすると大阪府警の拷問は終わったようです。

 (3)、特別公務員暴行陵虐罪

  ①、特別公務員暴行陵虐罪

   ・刑法には特別公務員暴行陵虐罪があり、警察官の「被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は凌辱若しくは加虐の行為」を禁じています。しかし、特別公務員暴行陵虐罪として警察官が逮捕されたり、逮捕されて起訴される率は異常に低いそうです。

  ②、なぜ特別公務員暴行陵虐罪で逮捕・起訴されないのか

   ・安田雅企氏は、「極道さんたちに、叩かれて当たり前という考えが強い。それを警察は知っていて、安心してリンチしているところがある」と指摘します。つまり、ヤクザは、警察から拷問をうけることは当たり前であるという考え方が強いそうです。よって、ヤクザが警察官を訴えるということは少ないといいます。

   ・検察官は、特別公務員暴行陵虐罪は公務員が職務熱心のあまりに犯す犯罪として認識しているので、起訴をせずに寛大な扱いがなされています。

   ・ヤフー知恵袋やYoutubeのコメント欄を見ても、警察官がヤクザに強い態度に出ると、警察はヤクザに怯まずによく働いてると肯定的にみる人が多く、警察を非難する声はほとんどありません。

2、メディアに出演するアウトローを許さない大阪府警

 (1)、意義

  ・大阪府警は、アウトローがメディアに出演することを許しません。大阪のアウトローの方は、不用意にメディアに出演しない方がいいですね。

 (2)、実証

  ①、拳月グループリーダー・拳月

   ・令和元年(2019)7月に、NHKスペシャルの「半グレ 反社会勢力の実像」に拳月氏が出演しました。しかし、その3ヶ月後の同年10月に大阪府警は強制性交の疑いで拳月氏を逮捕しました。

  ②、拳月グループナンバー2・テポドンこと吉満勇介氏(本名籠池勇介氏)
  
   ・令和元年(2019)7月のNHKスペシャルの「半グレ 反社会勢力の実像」に出演された拳月グループナンバー2・テポドンこと吉満勇介氏(本名籠池勇介氏)も、その1か月後の同年8月28日に大阪府警に恐喝の疑いで逮捕されました。丸山ゴンザレスの裏社会ジャーニーに出演されていますが、逮捕について大阪府警の警察官に「お前がテレビにでるからだぞ」と言われたそうです。やっぱり、大阪府警はメディアに出演するアウトローを許しません。


  ③、二代目東組四代目関谷組組長・木村雄治

   ・令和元年(2019)8月13日に、AbemaPrimeの「現役ヤクザ組長に密着取材 令和に暴力団は撲滅できるのか?」に木村氏が出演しました。しかし、その翌日に大阪府警は木村氏を覚せい剤取締法違反容疑で逮捕しました。

  ④、元山口組顧問弁護士・山之内幸夫

   ・山之内氏も平成3年(1991)2月、大阪府警に逮捕された時に、「目立っているのがいかんのや。おとなしくしとったらワシらでさえも暴力団がなくなるとは思ってないんや。それを襲名披露とかなんとかいってチャラチャラチャラチャラ目立ってるのがいかんのや」と言われたそうです。

3、反社会的な行為をする青年を許さない大阪府警

 (1)、令和の柳川組・迷惑系Youtuberへずまりゅう

  ①、三代目山口組二代目柳川組組長・谷川康太郎

   ・谷川氏は「社会からはじき出され、何かをして生きねばならない無数の人間がいる。やがてそのなかからリーダーが生まれて、グループの核ができ「組」が形成される」と柳川組の形成を説明しました。そして、「カネも地位も名誉もなかった、ソーニャ(注、『罪と罰』のラスコーリニコフの恋人)のような女性もいなかった。信仰する余裕もなかった。しかし、そういう状態のなかで「なにもないこと」の強さを身をもって知った」と柳川組の強さの秘訣を語りました。

  ②、令和の柳川組・迷惑系Youtuberへずまりゅう

   ・へずまりゅうさんもTwitterで「まだまだ兵士が足りん 俺と一緒にとある人物に凸撃してくれ!50~100人は欲しい!犯罪者で前科者とか大歓迎!犯罪者の集団を作ろうや!俺みたいにいつ捕まってもいい、いつ殺されてもいいって奴らが欲しい!無敵の軍団を作って世に知らしめないか?お前らが輝くのは今じゃないか?」(令和2年(2020)6月21日)とツイートしています。まさに柳川組の思想です。へずまりゅうさんも柳川組のごとく全国を暴れまわりました。

 (2)、逮捕

  ・令和2年(2020)7月、愛知県岡崎市のスーパーで会計前の魚の切り身を食べた窃盗容疑で、愛知県警岡崎署が逮捕しました。また、コロナに感染していたへずまりゅうさんが岡崎署の警察官や留置施設にいた容疑者などにコロナを感染させてしまいました。

  ・同年10月、大阪市内の衣料品店で経営者に罵声を浴びせた威力業務妨害と信用毀損の容疑で、大阪府警南署が逮捕しました。この時は大阪府警の警察官に悪態をついていたことから大阪府警は激怒し、マスコミにわざと晒すようにして南署へ送検したそうです。

  ・同年10月、東京都渋谷のスクランブル交差点前で布団を敷いて寝そべり通行を妨害した道路交通法違反容疑で、警視庁渋谷署が逮捕しました。

 (3)、更生したのか?

  ・保釈後のへずまりゅうさんはLINEで、「SNSの世界からへずまりゅうは抹消しました。今後は原田将大として真面目に生きていくので更生の邪魔はしないでください。私は社会の為に頑張ります。迷惑系という活動に限界を感じました。メンタルもズタボロです」と語りました。大阪府警で何があったのでしょうか。驚きの漂白力です。

 cf.なお、週刊実話WEB「へずまりゅう、ヤクザから集団リンチ!“迷惑系ユーチューバー”の悲惨な末路」によると、へずまりゅうさんは、兵庫県神戸市の歓楽街・福原付近で、暴力団関係者から集団リンチを受けて金を奪われて引退を表明したそうです。

 (4)、やっぱり更生せず

  ・へずまりゅうさんのTwitterによると、控訴するそうです。控訴は国民の権利ですのでガンガン争えばいいとは思いますが、大阪府警がアウトローに狂暴になる理由もわかります。

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<参考文献>

『鎮魂 ~さらば、愛しの山口組』(盛力健児、宝島社、2013)
『山口組三国志 織田絆誠という男』(溝口敦、講談社、2017)
『浜松一力一家始末記』(山平重樹、エスエル出版会、1988)
『刑法各論講義第3版』(前田雅英、東京大学出版会、2002)
「ジーンズ29本に1.2億円分の覚醒剤 組長が密輸容疑」朝日新聞DIGITAL 20190816 
「元K-1出場格闘家「拳月」が強制性交容疑で逮捕」 日刊スポーツ 20191025日
「引退報道のへずまりゅう LINEからにじみ出る「変わらぬ本質」」FRIDAY DIGITAL 20210116
「迷惑ユーチューバー・へずまりゅうを〝さらし者送検〟 東京とはひと味違う大阪府警」東京スポーツ 20201020
「ユーチューバー「へずまりゅう」関連の感染7人 愛知県」朝日新聞DIGITAL 20200720
「へずまりゅう、ヤクザから集団リンチ!“迷惑系ユーチューバー”の悲惨な末路」週刊実話WEB 20210502