1、意義

 ・振り込め詐欺とは、平成16年(2004)に警察庁が、それまでに「オレオレ詐欺」「架空請求詐欺」「融資保証詐欺」などと呼んでいた詐欺の統一名称として採用した名称である。

2、種類

 (1)、オレオレ詐欺

  ・典型的な手口は、高齢者を狙って電話をかけ「オレ、オレ」と名乗って、子や孫だと錯覚させる。その上でさまざまな苦境に陥っていることを伝え、金が要るので高齢者に特定口座に金を振り込ませる。

 (2)、架空請求詐欺

  ・典型的な手口は、アダルトサイトに登録した者達の名簿を買い付け、債権管理組合などと名乗って利用料金を請求し、特定口座に振り込ませる。

 (3)、融資保証詐欺

  ・典型的な手口は、融資をする気はないが融資をする旨を触れ込み、融資を申し込んできた者に保証金や手数料、交渉料などの名目で特定口座に振り込ませる。

 (4)、還付金詐欺

  ・典型的な手口は、税務署や自治体などの役所などを偽装し、税金や医療費を還付するという名分で、実際には特定口座に金を振り込ませる。

 (5)、攻略法詐欺

  ・かつては、効果のとぼしい、もしくは全くないパチンコ攻略法を売っていたが、近年はパチンコ攻略情報は売れない。よって、「サクラ募集」「打ち子募集」といった方法に変わった。典型的な手口は、かつてパチンコ攻略法を買った顧客の名簿から、パチンコ店のサクラをやらないかと誘い、パチンコ店と打つ台を指定する。教わった通りの攻略法で打つと偶然に儲かる場合がある。この場合、被害者はパチンコ攻略情報を信用してしまい、パチンコ攻略会社に登録をしようとする。この時に、他の攻略グループに登録している時は退会する必要があるとし、その退会手続きを代行する手数料として、特定口座に金を振り込ませる。

3、巧妙な手口

 (1)、名簿の調達

  ・振り込め詐欺の命が、名簿である。この名簿は、例えばアダルトサイトの架空請求詐欺であれば、実際にアダルトサイトを運営している業者から買い取ったり、システム構築会社の管理職的な人を金で抱き込んで手に入れたりする。

 (2)、携帯電話の調達

  ・被害者へ電話をかける携帯電話は、東京や大阪などのドヤ街の住人や、氷河期世代の解雇や派遣切りされた若い世代から調達される。携帯の利用料を払わずに1ヶ月で使い捨てる。

 (3)、口座の調達

  ・被害者に振り込ませる口座も、東京や大阪などのドヤ街の住人や、氷河期世代の解雇や派遣切りされた若い世代から調達される。ネットバンキング登録付で1口座5万円ほどだという。

 (4)、銀行の営業時間中に電話をかける

  ・被害者に考える時間を与えずにすぐに振り込ませるように、銀行の営業時間中である9時から3時までの間に電話をかけまくる。

 (5)、出し子の利用

  ・振り込まれた金はすぐに引き下ろすが、その銀行口座から被害者が振り込んだ金を引き下ろすのが出し子である。ATMにはカメラが付いていて顔が記録されるので、もっとも逮捕されやすい役である。出し子は架空請求部隊とは切り離して、事務所へは出入りさせず、携帯電話で指示をだす。月100万円ほどの給料を支払う。

 (6)、少額を複数回でやめる

  ・被害者が被害にあっていると思わせないために、1回目は5万円、2回目は別の名義で20万円と一度騙された人に対しては、少額を複数回請求し、それでも1人200万円程度でやめる。

4、誰がやったのか

 (1)、暴力団

  ・振り込め詐欺は、若い20代30代の半グレが多いが、その背後には暴力団もいた。また、暴力団が直接振り込め詐欺を行っている場合もある。

 (2)、半グレ

  ・暴走族、ヤンキーやチーマー出身の半グレ層が、振り込め詐欺を多く行った。

 (3)、元ヤミ金業者

  ・暴力団や半グレ層とも被るが、判例によってヤミ金業者から借りた金は、元金も含めて返還する必要がないことが確定された。よって、ヤミ金に携わっていた者たちの一部は、どうせ返さなくてよいのであれば、貸してないカネを請求してやろうということで、振り込め詐欺へ進んでいった者も多い。

 (4)、有名私立大学出身のエリート達

  ・振り込め詐欺グループの中には、有名私立大学の現役学生や、全国有数の進学校出身者など、エリートとみられる若者のグループもあった。

 (5)、氷河期世代の若者たち

  ・就職氷河期が長引き、非正規雇用、ワーキングプア、ネットカフェ難民、若年ホームレスといった若者たちの中の一部が、振り込め詐欺グループへと加入していった。彼らは、通常であれば表の社会で生きるような人達である。

 <参考文献>

 『新装版 ヤクザ崩壊 半グレ勃興 地殻変動する日本組織犯罪地図』(溝口敦、講談社、2015)