1、意義

 ・バブル経済の時期、地上げや株取引で資産を増やしていったのが「経済ヤクザ」であり、その代表は当時山口組の若頭であった宅見勝である。そして、裏社会の住人達を表の経済に引き込んだのが銀行や不動産会社などの一流企業であった。

2、どのようにして「経済ヤクザ」は儲けていたのか?

 (1)、バブル経済

  ・巨額の貿易赤字を抱えたアメリカは、ドル高を是正するためにプラダ合意を締結した。これによって日本は輸出産業が打撃を受けたので、内需を拡大させるために日銀は公定歩合を引き下げた。銀行から融資を受けやすくなった企業の中には、土地価格が急速に上がったことに目をつけて、土地売買にのめり込むところも多くあった。

 (2)、ヤクザを利用した大企業達

  ①、ヤクザを利用した大企業達

   ・バブル時、土地の価格は刻々と上昇していたので、土地をまとめるのにわざわざ裁判を使って時間をかけてまとめるよりもヤクザを利用して手っ取り早く地上げをした方がよかった。短期間で複雑な土地の権利関係をまとめる上でヤクザが利用されてたのである。

  ②、資金洗浄

   ・このような地上げによって獲得した資金は、株取引で資金洗浄された。例えば、平成2年には繊維製品大手「クラボウ」の株を、宅見組系の不動産会社が買い占めて事実上筆頭株主となり、その後の売却益によって多額の資金が宅見組に流れている。

 (3)、宅見勝の力の源泉

  ①、「経済ヤクザ」の代表的存在

   ・宅見は、フロント企業を傘下に置き、検事出身の弁護士や仕手グループなど豊富な人脈を持っていた。「日経新聞を読んでシノギのネタを探さなあかん。これからは税金を払うような稼業が必要や」と組員に助言をしていた。宅見組は大阪であったが、バブル期にはさかんにバブルで湧いている東京へ進出していった。

  ②、宅見勝の力の源泉

  ・宅見は五代目山口組組長・渡辺芳則の擁立のために中心的は働きをし、山口組のナンバー2である若頭まで登りつめた。その力の源泉はこのような経済活動によって獲得した豊富な資金力であった。

3、バブルの崩壊とその影響

 (1)、バブルの崩壊

  ・平成3年(1991)地価高騰を抑えるために公定歩合を引き上げや不動産融資の総量規制が実施されると、不動産価格や株価は急落した。バブルの崩壊であり、この後、ヤクザと大企業との不祥事が相次いで判明する。

 (2)、不祥事

  ・野村証券、日興証券と、指定暴力団稲川会元会長・石井進との取引が発覚。石井らは東急電鉄の発行済み株式数の2%強まで買い進め、株を担保に両証券系列の金融会社から360億円の融資を受けたことも判明した。

  ・イトマン事件

  ・阪和銀行(経営破綻後に解散)副頭取射殺事件

  ・住友銀行(現・三井住友銀行)名古屋支店長射殺事件

 (3)、暴力団対策法の施行

  ・平成4年(1992)、山一抗争やバブル時代に表経済の中にシノギの手を広げたことの反発から、暴力団対策法が施行された。これによって組を離脱する組員が続出し、ヤクザは地下に潜って活動をするようになる。

<参考文献>

  産経新聞「ニッポンの分岐点」「暴力団(2)経済ヤクザ 企業に寄生したバブルの寵児」