Youtubeにあがった「朝まで生テレビ!  激論!暴力団はなぜなくならないか」(1992年2月28日放送)のメモです。長くなりましたが、暴対法制定当時何が語られていたのかです。その後の日本の制度改革を見れば、大きな転換的であったことが分ります。

1、なぜ今暴対法が制定されたのか

 (1)、社会の大きな転換

田原総一朗「企業を見ても、例えば野村證券がこの前社長や会長がやめたでしょ。あれはなんで辞めたのかといいうと、法律違反は何もやってないですよね。証取法違反でもないですよ。あれは何かと言えば、大蔵省の掟ですよね。見えない糸ですよ。つまり、今までは日本の企業も、法律で動いてはいなかった。法律ではないもので全部縛られてきた。法律ではないもので縛られている世界で一番便利なものは、それは暴力団ですよ。それをみんなが利用し合ってきた。これをやめようということで、金融界も今は見えない糸ではなくて、見える糸にしようとしたでしょ。日本の社会も全部見える糸に、リーガルマインドにグッと動いているんですよ。その一環が暴力団新法ですよ。大蔵省も通産省もリーガルマインド風の国にしようとしているんですよ。」

 (2)、暴力団がバブルを通して日本社会に浸透し過ぎ巨大化し過ぎた

警察庁刑事局捜査第二課長石附弘「昨年の証券スキャンダルだとか、とにかく日本の社会、経済にあまりにも深く、奥座敷まで暴力団が浸透しちゃってる。これを放置しておくと、戦後延々と築いてきた日本の健全性といいますか、基盤から暴力団に食われてしまうという危機感、暴力団新法9条で暴力的要求行為というのが11個書いてありますけれども、我々は実際に被害にあっている人を調べました。つまり、市民や企業の側から暴力団に流れる蛇口を閉めようと、結果的にはボディーブロー方式ですけれども、暴力団もだんだん衰弱していくだろうと。それから人の問題ですね。暴力団の3分の1は未成年の時に暴力団になっているんですね。これは将来の日本を考えるにあたっては大変に問題で、要するに暴力団員になることは次の犯罪再生産になるわけですから。」

 参考)、平成3年(1991)、株取引に伴う損失補てん問題により、当時の社長であった田淵義久が引責辞任した。このときの調べで、野村証券は二代目稲川会会長・石井隆匡が東急電鉄株を買占める窓口となっていたことも露見した。

 (3)、国際化

田原総一朗「僕はこの暴力団新法ができたのは国際化だと思いますね。国際化してきて、アメリカやヨーロッパの真似事をしなければいけなくなってきた。そうなると、リーガルって何だっていう話になる。それに近づこうとしているんだと思いますよ。先週、僕が日曜日にやっている番組にKGBの元幹部が出てきた。これは面白い話だけれども、数か月前にパリで、CIA、KGBとか世界中にああいう機関の幹部が集まって会議をやった。その時に、東西の対立は終わったのだから、これからの共通の敵は何かとして決めたものが3つあると。ひとつはマフィアだと。ひとつは薬だと。もうひとつは武器だっていう話なんだけれども、この中にマフィアが入っているわけだ。多分、国際的にマフィアをやっつけようと。その時日本は何だ。暴力団だという話になるでしょ。マフィアと暴力団は同じなのか違うのかは大きな問題だけれども、今度の暴力団新法はこういう国際的背景が大きく働いているんだと思う。だから、石附さんは認めないと思うけれども、アメリカの要請があるんだと思う。」

 (4)、抗争事件の頻発

警察庁刑事局捜査第二課長石附弘「(暴力団新法を今ここにきてやる理由は)沖縄の対立抗争とその前の八王子の対立抗争、それから大阪でNTTの方が自分の家でドアを開けたら対立抗争相手と間違えられて亡くなったと、こういう一般市民に大変な被害がありました。」

 参考)、第六次沖縄抗争→ヤクザの抗争史 第六次沖縄抗争

     八王子抗争→ヤクザの抗争史 八王子抗争

     山波抗争→ヤクザの抗争史 山波抗争

 (5)、左翼の弱体化

大島渚「左翼がダメになったわけですよ。左翼を取り締まる必要がないから警察は力が余っているんですよ。」

 (6)、警察幹部の若返り

大島渚「警察の幹部が若くなったこともひとつの理由だと思うね。昔の幹部だったら、暴力団も必要悪だと思っていたと思う。しかし、おそらく今の若い幹部の方々は必要悪じゃないって考えてらっしゃると思います。」

2、内容

 (1)、暴対法の意義

警察庁刑事局捜査第二課長石附弘「巨大化した暴力団が、その組織の威力を利用して、犯罪スレスレの部分、我々はグレーゾーンと言ってますけれども、犯罪スレスレの部分で犯罪にならないような形態、極めて悪質巧妙な手口で、一般市民とか企業をターゲットにして資金を獲得していると。結局今まで国民や企業は泣き寝入りなんですね。この法律は暴力団対策法という略称をしていますけれども、もちろん暴力団を弱化するため、あるいは壊滅するための第一歩ではございますが、それ以上に、国民の今まで泣き寝入りしていた、つまり損害を未然に防止するとここが問題なんです。それをこの法律で実現できるようになったと、そういうことです。」

村橋泰志弁護士「暴力団対策法は、確かに中身からみると暴力団壊滅法ではないんだね。破防法とは違うわけだ。解散まで命じていないわけ。個々の暴力的要求を禁止するという内容にとどまっているわけね。けれどもこの法律の歴史的意味というのはね、権力の方が暴力団に対して縁切りを宣言したんだと。今まで権力、企業や経済ね、やっぱり暴力団を意図的に利用しとったわけだ。ところがこれからはあなたたちはいりませんよ、そこにいったわけです。」

 (2)、暴対法の概観

  ①、以下3つの要件を満たすと指定暴力団の指定される

   ・暴力団の威力を利用して組員に資金を稼がせることを目的とする団体

   ・組の構成員のうち恐喝など暴力的不法行為の犯罪経歴者が政令で定めた比率を超えている団体

   ・代表者の下に階層的に構成された団体

  ②、指定暴力団に指定されると犯罪となる行為

   ・口止め料の要求

   ・寄付金や賛助金の要求

   ・下請け参入の強要

   ・ジャバ代やあいさつ料の要求

   ・用心棒代の要求

   ・高利貸しの債権取り立て

   ・借金の踏み倒し行為

   ・不当な融資要求

   ・地上げの強要

   ・示談への介入

   ・ゆすりやたかり行為

  ③、②の行為で暴力団を利用した市民の側も罰せられる

 (3)、規制のやり方

警察庁刑事局捜査第二課長石附弘「犯罪という言い方がありますが、刑法を改正したのであればそういう言い方もあると思いますが、今回は犯罪にならないんです。犯罪スレスレのそういうグレーゾーンの領域、刑罰法令ではできない部分を行政的に規制をするわけですね。つまり、公安委員会が指定された暴力団について、その暴力団員が不当な反社会的な要求行為をやった時に、公安委員会がそういう要求行為をしちゃイカンと中止命令をして、中止命令に違反した場合に刑罰が科されるという二段階論なんです。」

 (4)、指定と確認

警察庁刑事局捜査第二課長石附弘「指定暴力団の指定は3年有効なんですね。3年後にその暴力団の活動実態、しかも民主的な手続きですね。これは指定は都道府県の公安委員会がやりますけれども、やる前にちゃんと暴力団の言い分を聞くと。聴聞手続きっていう手続きがあります。あとは、国家公安委員会で確認の手続きがありますね。これも国家公安委員会だけがやるのではなくて、民間の有識者の方からちゃんと暴力団であるか、つまり右左あるいは社会団体であるとかそういう団体ではないか、ちゃんと公平に審査を頂いて、その上で確認ということをやると。」

 (5)、影響

村橋泰志弁護士「暴力団の組員が仕事をやってはイカンということは、一言もこの法律には書いていないわけ。指定暴力団の威力を利用して、金品を要求するようなことはしてはいけないというのが、暴力的要求行為なわけですね。金を借りてはいけないとか、示談行為をやってはいけないとか、土建業をやってはいけないとか単純なことを言ってはいないですよ。遠藤先生のご本を読んでも、ヤクザの生業を奪いからけしからんとおっしゃったんですが、「生業」と「正業」の二つあるんです。」

四代目会津小鉄会会長高山登久太郎「受けてる本人らの感覚と、先生が外角から見ている感覚は全然違うわけですわ。一つの例を言うと、我々かて何をしても仕事を取られていくから、企業舎弟っていうダミーを使っているわけですわ。今現在こういう事が起きているんですよ。宅建業あるでしょ。宅建業の外人登録は結局3年更新になっているわけでしょ。そこで迷惑かけちゃイカンということで、ウチの若い衆が籍を抜いたわけですわ。これは2年前に抜いているわけですね。ほんなら3年で更新に申請を出したら、警察の本部長が言ったから荒巻知事が回答で、これは却下すると。こんなことをね、警察に言われたから却下するってそういうことを今はどんどんやっていますよ。だから先生が言っている基本的なことがあっても、法律を拡大解釈して物事を考えているわけだ。だから先生が言ってるように、法律的に要求行為は暴力行為でなかったらいいんだと言うんでしょ。ちゃいまんねん。職業を全然取り上げていっているんですよ。今現在。」

 参考)、荒巻知事とは京都府知事の荒巻禎一氏。

 (6)、比較法

村橋泰志弁護士「ドイツでは犯罪結社を取り締まる法律があるとおっしゃったけれども、イタリアでもあるんですね。マフィアを作ってはいけないと。加入するだけでも数年という刑になる。アメリカは暴力団であろうとなかろうと一般市民であろうとリコ法というのがあって、不法な収益を利用して資金活動をすれば、それだけで犯罪にすると。このように社会に応じて作るわけです。では日本ではどうかというと、おそらく法律というのは最小限が望ましいと。しかし、今の現象は無視できないと。ではどうしようかということで、暴力団対策新法ができたと。これが社会的合意だと思います。だから、日本が将来暴力団を直接結社することを禁止するかどうか、それは今後の問題。今後、暴力団がどのような動きをするのか。世論が暴力団自体を取り締まらなければならないと、そこまでになるのか。それは将来の問題です。」

3、制定過程

田原総一朗「この場でもこれだけこの法律について議論があるんですね。どうして国会では出なかったんですか。どうして共産党から社会党まで全部賛成だったの。」

大谷昭宏「地方行政員会ですからね。自治省と警察庁が一番権限を握っているわけですよ。国会議員がこんな所で警察庁にガタガタ言ったら、自分の選挙違反がどれだけ怖いか。全部けじめとられますよ。そんな所で警察庁に盾突くとかそんなバカなことを国会議員は絶対しません。」

4、問題点

 (1)、暴力団新法は既存の法律で十分である

遠藤誠弁護士「ヤクザが現行法に違反した場合、これはビシビシ検挙し、逮捕し、厳罰に処するべきであると私は思っております。それはヤクザに限りません。自民党が現行法に抵触したらビシビシ検挙すべきであると全く同様の意味において、そのようにやるべきであります。現在の法律だけでヤクザを取り締まる法律が28個ございます。今回の新法の別表に28個ならんでおります。条文数で数えますと94ヶ条ございます。これを徹底的に適用すれば、このような変な新法を作らなくても、ヤクザの違法行為は全部取り締まることができます。ところが警察はそれをやらない。やらないというよりも、やれない。なぜか。これは60年安保、70年安保あるいはその後のサミット警備等を通じて、警察部内の公安部門の予算と人員が非常に肥大化しちゃった。それに反比例して、本来警察の職務とすべき捜査部門が異常に弱体化してしまった。したがって、弱体化してしまったもんですから、現行法が94ヶ条もあるのに、そのまま額面通りに適用できない。だからこれまでの法律では不可罰行為、罰する必要もないとされていた、より違法性の弱いものを新たな犯罪類型として処罰するとという点が、今回の法律の本質でございまして、これは考え方としては全く本末転倒と言わざるをえません。」

 (2)、憲法問題

  ①、法の下の平等

大谷昭宏「特定の団体に属した人だけ罰するってなっているでしょ。これはどうして憲法に違反しないんですか。この人達は一般市民とは違うんでうしょってあらかじめ決めつけて、お前たちがこういうことした時だけ罰するよと。これが憲法の理念となぜ反しないんですか。特定の人達が大声を出したら罰せられて、そうじゃない人が大声を出したら罰せられないと。暴力団の近所で暴力団員ではない人が大声を出してもこれは何にも問題がないわけでしょ。」

村橋泰志弁護士「法の下の平等に反するかという問題でしょ。ヤクザの人権は無制限ではないわけ。合理的な制限であるならば憲法は許しますよ。」

警察庁刑事局捜査第二課長石附弘「犯罪という言い方がありますが、刑法を改正したのであればそういう言い方もあると思いますが、今回は犯罪にならないんです。犯罪スレスレのそういうグレーゾーンの領域、刑罰法令ではできない部分を行政的に規制をするわけですね。つまり、公安委員会が指定された暴力団について、その暴力団員が不当な反社会的な要求行為をやった時に、公安委員会がそういう要求行為をしちゃイカンと中止命令をして、中止命令に違反した場合に刑罰が科されるという二段階論なんです。」

大谷昭宏「最終的には刑罰はあるんでしょ。どうして二段階だと憲法に違反しないんですか。刑法だろうと行政だろうと憲法の下にあるんでしょ。どうして行政を通したら憲法に違反しないっていう論議が出てくるんですか。警察というのは司法機関でしょ。どうしてそこに行政を一枚かませしたら憲法違反にならないって。」

村橋泰志弁護士「法の下の平等に反するかはこれはいろいろなレベルで基準があるわけですね。その一つの問題として、規制のやり方の問題があるんです。即罰なのか間接的に規制するのか2つの方法があって、間接的方法であれば、規制の手段としてより緩やかであると。こういう風に考えれば、合理性が担保されます。」

大谷昭宏「しかし、公安委員会が警察とほぼ一体であることは、一般の市民でも知っていることですよね。公安委員会を通したら警察が直接出ていったんではない。とりあえず中止命令を出して、なお聞かないから刑罰だと。実際には公安委員会はお飾りだと。」

飯干晃一「憲法違反かどうかという問題について、ぼくの意見より憲法を読んでみましょうね。憲法12条「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」とこう書いてあるわけですね。それで公共の福祉とは何だというのは難しくてね、権利が内在的に持っている社会的な制約だというのが今の学説らしいですね。だから、社会的な制約の中には暴力団は入ると思う。それからもう一つ重要なことがあります。行政事件訴訟法第31条1項「取消訴訟については、処分又は裁決が違法ではあるが、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、原告の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮したうえ、処分又は裁決を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるときは、裁判所は、請求を棄却することができる」という条項もあるんですね。違法だとかなんだとか言っても、まずは公共の福祉を前に立てろというのが法の精神なんです。ですから、これは憲法違反である疑いは確かにありますよ。あるけれども、公共の福祉の前ではこれを棄却してもいいんですよ。裁判所は。」

  ②、結社の自由

警察庁刑事局捜査第二課長石附弘「憲法の議論について、結社の自由云々の議論が前からあるんですね。これは指定暴力団に指定されると、反社会的集団としてレッテルを張られるということになるんですけれども、だからといって、その暴力団になんらの規制がかかることはない。例えば、解散とか。つまり、団体に対しての規制はなんらかからない。規制を受けるのは、あくまでも規制を受けた団体の構成員が、暴力団の威力を示して行う所の、国民の自由や財産権を害する行為なんです。ですから、暴力団を反社会的団体と指定して、その構成員が反社会的行為を、そこだけです。反社会的行為を、そこの部分だけを規制することは、結社の自由に反しないとこういうわけですね。」

警察庁刑事局捜査第二課長石附弘「この法律で暴力団は生活ができなくなる。要するに、職業につけなくなるとこういう誤った議論をされる方があるのですが、この法律は暴力団といえども法令の範囲内で、例えば下請け業だとか貸金業だとかそういうことまで禁止しているわけではないんです。問題は、指定された団体の構成員がこうした企業活動なり商行為をする外観をとりながら、組織の威力を示して市民から不当な金品を巻き上げる、そういう形態の部分を絶対に許さないとこういうことなんですね。」

遠藤誠弁護士「確かに新法第9条には、暴力団の威力を示して次に掲げる行為をしてはならないと書いております。ところがこの法律は、「威力」という言葉と「暴力」という言葉を使い分けておりまして、「威力」とあるのは「暴力」ではありません。「暴力」に至らない「威力」とは何か。ヤクザというものは、ここにおられる安部(譲二)さんはすっかり人相がよくなったわけでありますが、ただいま現役の方々は一般人が顔をみただけで「威力」を感じる人が多いんです。整形手術でもしないかぎり、あらゆる人に「威力」を感じさせます。そうすると、ここに「威力を示して」と書いてあったって、およそヤクザは、請負業をやっちゃイカン、物品納入業をやっちゃイカン、サービス業をやっちゃイカン、銀行に行って金を貸せと言ったら1年以下の懲役に処すると、中止命令を経由はしますが。」

  ③、人権問題なのに動かない同和団体

四代目会津小鉄会会長高山登久太郎「人間は何をしようにも人権があるわけだから、人権の問題を法律によってそれを抹殺していくということが実際にやっていいのか悪いんか、ワシはそれを聞きたいわけだ。悪いものを罰するということは、これは仕方がないと思いますよ。しかし、何もせんもんまで組織におるから、これが同じように悪いんだということで、仮に一本のリンゴの木があると、そのリンゴの木に悪いリンゴがあったとしてもぎ取って放るのはいいですよ。それを、枝、葉っぱ、幹、根までいわすと。そんな法律を作るということは、暗黒の世界でしかないと。」

四代目会津小鉄会会長高山登久太郎「うちは70%同和がおるわけですわ。今の同和の体質ですよ。同和の体質がイカンとワシは思うの。ハッキリ言って。時限立法で保障して、横にしたのを縦にマンション建てただけのことやろね。地位向上が誰もできてないわけや。中に入ってる者は家賃は滞納するわ。ハッキリ言ってそういうことせんとね、同じ同和の人間が我々をかばおうとはしないですよ。人権問題に触れてるのにね。こういう問題を放置してね、だいたい権力がある方を味方しとるわけですわ。だいたい組織はね。我々はもう暴力団だと。あいつらにはどんな法律ができてもええんやと。あいつらは人間やないんだから。」

村橋泰志弁護士「同和問題と暴力団問題を一緒にしたらイカンですよ。同和問題というのは本質的に言いますと、歴史的な差別ですよ。自分で好き好んで同和地区に住んで、同和を名乗ることを選んだ人はいないんですよ。そういうものを日本の社会がどのように解決するのかというそういう問題なんですね。暴力団の問題は、歴史的にあなたは暴力団になりなさいという風に決めつけられたわけでもなんでもないわけ。自ら選んだというわけですよ。やめようと思えばやめることもできる。理屈の上では。やめた人もおる。」

 (3)、暴力団離脱者のケア

  ①、行き場のない暴力団離脱者

田原総一朗「警察はおそらく高山さんを攻めて攻めて、山口組を攻め込めば、みんなヤクザからどこか行って正業につくとこうみてます。それはどうなんですか。」

四代目会津小鉄会会長高山登久太郎「仮にカタギになったからと言うて、社会の受入れ体制はないですよ。仮に仕事をしようと思っても、前科者に仕事を与えませんよ。」

田原総一朗「暴力団新法を徹底的にやりますね。もうヤクザは商売もできない。身動きがとれなくなるとどうなりますか。」

四代目会津小鉄会会長高山登久太郎「そりゃ、死ぬわけにはいかんしね、何かをするでしょう。何かをしないと飯が食えないから。死ぬか生きるかという道しか残ってないんだから。マフィアになるとかならんとかは先の話ですけれどもね、私らはあくまで任侠道を守っていこうと。何も人に悪い事をしてへんからね。わしらのもんで助かっている人もおるんですよ。そりゃ泣かされる人もあるでしょう。泣かされる人が多いからこういう問題も出てくるわけやからね。それは否定しませんよ。だけども、そん中でも助けていた人間もぎょうさんおることは間違いないわけですわ。」

  ②、暴力団離脱者への政策の不備

四代目会津小鉄会会長高山登久太郎「時限立法で同和をやっているように、これは24年やってますさかい、こういう風に国が保障でもして、何年間のうちにやめなさいとかね、いろんな法を作るのが順序やと思いますわ。だけども何もせんと。お前らやめろで、明日からの生活はどうしまんの。」

田原総一朗「例えばね、ベンツは乗れませんよ。ベンツは乗れないけれども今の暴力団をやめるならば、建物作ってそこで2年間なり3年間自衛隊みたいな訓練をやると、更正施設ですよね。やるならばのりますか。」

四代目会津小鉄会会長高山登久太郎「のりますよそれは。時限立法でも作って、我々を更正していくんだというようなことをすればね、そういう流れは作れます。」

 (4)、国税庁との連帯

飯干晃一「この法律の一番の欠点は、警察だけが矢面にたっているんですね。我々庶民の側からいえば、なんとか一家の総長がとんでもない家に住んでいるわけですよ。これが税金を一銭も払っておらんと。こういう不公平を国民は怒りをもって見ているわけですよ。この法律は警察だけが出てきて、なんで国税庁が法律の中に出てこないのか。」
 
 (5)、不道徳なことまで取り締まっている

西部邁「取り締まるっていうのは二つのレベルがあって、ひとつは不法の行為を取り締まるという意味と、もう一つは不道徳、さきほどから暴力団は悪いとか、どうしてお詫びをしないんだとかそういう言い方をしていたけど、それは明らかに道徳のレベルでしょ。もちろん私は道徳家になりたいから、私も謝っただろうと思いますけれども、しかし不道徳の人間を、そういう集団を国家が取り締まるいわれもないし、そういう弊害も大きいし、したがって取り締まるという言葉の中に、不法の事しか警察は取り締まれないはずで、したがって既存の法律があったら警察が言うことは、既存の法律に従ってどこまで取り締まれるかということを言うべきであって、不道徳に及ぶべきであることまで云々するのはお門違いではないかというのが一つ。それに関連して、グレーゾーンの話があった。グレーゾーンの中には、不法に片足踏み込んだものと、明瞭な不道徳、不法とは言えないけれども市民道徳のレベルから考えて明らかに不道徳だということがあると思うんですよ。しかし私は、警察であろうが検察であろうが、不道徳については別個の法律によって取り締まるというのは、法治国家として行き過ぎだと思うし、市民側から言えば、暴力団の脅かし、ブランドに弱いということは、日本市民が自分たちの市民道徳を守るにあたって、勇気もなければ行動力もないということを意味しているんですよ。したがって、市民がそういう勇気がないからといって、警察が市民道徳の代わりをやってあげましょうというのは、もちろんそうしなければならない側面もあるのかもしれませんが、一般論といえば国家権力が道徳の問題にまで入るのはおかしいです。」

飯干晃一「私は先ほど西部先生がおっしゃいましたように、この法律には奇妙な所があるんですよ。それは、18条の事務所における禁止行為というのがありますね。事務所の内外に代紋だとか標識だとかそういうものを置いちゃイカンと。それは通行人に畏怖の念を与える。次の第2項が問題なんですね。粗野、乱暴な言動、威勢を示したら1年以下の懲役。もちろん中止命令が出て、破った場合ですけれども。50万円以下の罰金っていうんですね。このマナーに対しての罰則というのは、世界の暴力団対策法をいちおうは勉強しましたけれども、こういうのはちょっとないですね。山口組も看板を立てて、ゴミを捨てちゃいけないとか大声で話をするなとか書いてあるんですよ。そういうのは、暴力団だってマナーを守ろうっていう看板を出しているので、1年以下50万円の罰金っていうのは、これは近代法にそぐわないのではないのかと。」

 (6)、暴力団を利用する側の問題

家田荘子「地上げとか取材したんですけれども、ある大企業が暴力団に依頼をするわけですね。それで市民たちが苦しめられるんです。頼む人がいるんですね。それから借金の取りたてなんかにしましても、本当にコツコツと働いてそれでパンクしてしまった人もいますけれども、最初から返す予定のない人が借りまくってとか、暴力団が来たら警察に飛び込めばいいやと、バックレることを目的で利用している人達がいっぱいいるんですね。暴力団の事務所に行けば、手形を持ってきて取立てくれって一般の人がどんどん頼みにくるんですね。こういう利用する人達の方がもっと悪であって、暴力団は利用されているて、また国会で全会一致っていうのは気に入らないんですけれども、よく国会議員とお話しをしますと、普段ヤクザにはお世話になってますってみんな言うんですけれども、こういう時だけ反対に周るのはおかしいんじゃないかな。」

村橋泰志弁護士「それは確かに悪い事。企業が地上げ、あるいは株の買い占め、そういう所で暴力団を利用したと。それがバブルの中で暴力団をこんなに大きくした根本的原因ですよ。それはいけない。だから暴力団対策法はどう考えたのかというと、それはいけませんよということをうたっているわけです。暴力団対策法の第10条を読むと、何人も、指定暴力団員に対し、暴力的要求行為をすることを要求し、依頼し、又は唆してはならない、と。」

 (7)、暴対法の暴力団以外への適用可能性

大谷昭宏「この法律は最初は「暴力的組織」だったんですよね。それを途中から、これはヤバいぞと。「暴力的組織」なんて書いたら大反発をくらうということで、慌てて「暴力団」に変えた経緯もご存知でしょ。最初は「暴力的組織」を全部やりたかったんですよ。」

警察庁刑事局捜査第二課長石附弘「この法律の中には「なわばり」だとか「用心棒代」だとか、要するに暴力団しかやらないような事が書いてあるわけですね。そういう意味で「暴力団」が初めて法律上の定義、つまり、新しい日本の基準ができたんですね。今までは警察が取り締まりの対象として「暴力団」という言葉を使っていましたが。」