1、昭和40年代前半頃

 (1)、意義

  ・昭和40年代前半頃までのヤクザは、基本的に貧困であった。

 (2)、具体例

  ①、山本健一

   ・昭和40年代前半頃、山口組若頭補佐であった山本健一は、肝臓を患い始め、かつ椎間板ヘルニアの症状が出ても、治療費はもとより入院代すら払えなかった。妻に「悪いけど、里に帰ってくれるか。わしはいまの状態でお前を養うていかれへんのや」と言ったという。

  ②、宅見勝

   ・総資産3000億とも言われた宅見であるが、昭和30年代後半頃は「わしの若い時分、ヤクザゆうたらカネがなくて当たり前、せいぜいの夢が風呂つきアパートに入ることやった。車はタクシー上がりの何十万走ったか分らんやつ、ピカピカに磨いて、それでも得意になって乗ってたもんですわ」といった感じであった。

2、昭和52年(1979)の警察庁の調査

 (1)、意義

  ・昭和52年(1979)の段階で、暴力団員は10万人、年収総額は1兆円、当時のサラリーマンの平均年収は246万円である中、暴力団員一人あたりの年収1000万円であった。これは上は組長から、下は末端の組員までを含めた平均額であるので、末端の組員はもっと少なかったとは思われるが、この当時のヤクザは、かなり稼げる業界であった。

 (2)、生活形態と年収

  ①、組定着型

   ・組織の首領、上級幹部クラスで全体の14.6%ほどを占める。彼らの年収は平均3000万円ほどであった。

  ②、組依存型

   ・組織の幹部や中堅クラスで全体の22.4%ほどを占める。彼らの年収は平均2000万円ほどであった。

  ③、女性依存型

   ・組織の中堅以下の組員で特定の女性に寄生している層で全体の28.2%を占める。彼らの年収は1000万円ほどであった。

  ④、親依存型

   ・親や兄弟に頼って生活している層で全体の8.8%を占める。彼らの年収は300万円ほどであった。

  ⑤、下層労働者型

   ・露店や労働者をして生活をしている層で全体の20.5%を占める。彼らの年収は300万円ほどであった。

  ⑥、特定の組織にいない暴力常習者

   ・特定の組織にいない暴力常習者などで全体の5.5%を占める。彼らの年収は300万円ほどであった。

 (3)、資金源

  ①、合法的資金源

   ア)、土建(11.5%)

   イ)、金融(12.2%)

   ウ)、風俗(22.5%)

   エ)、興行(2.0%)

   オ)、露店(6.6%)

   カ)、その他商店(2.3%)

   キ)、その他業種(8.7%)

   ク)、なし(33.4%)

  ②、非合法的資金源

   ア)、賭博(57.8%)

   イ)、債権取り立て(32.4%)

   ウ)、ノミ行為等(23.2%)

   エ)、麻薬など(13.1%)

   オ)、エロフィルム(8.0%)

   カ)、ポン引売春(9.2%)

   キ)、土建関係(手配)(1.3%)

   ク)、みかじめ(用心棒)(22.3%)

3、平成元年(1989)の警察白書

 (1)、意義

  ・バブル景気の時代、ヤクザ全体の年間収入はおよそ1兆3019億円とされ、一部には7兆円説も出るほどヤクザはかなり稼げる業界であった。当時の全国給与所得者の平均年収を500万円と考えると、首領クラスはその100倍、つまり年収5億ほどの稼ぎがあったという。

 (2)、組織実体

  ・ある大規模暴力団は、Aクラスの幹部が約120人いる。彼らは各自月額50万円を上納するので、これだけで6000万円となる。同様にBランクの幹部約250人が各自25万円を上納するので月額6250万円、またCランクの幹部約600人が各自15万円を上納するので月額9000万円となり、合計で月2億1250万円、年額25億円以上が上納されることとなる。これを総裁と会長の2人で二等分したとしても、年額12億5000万円の上納金が黙って入ってくることとなる。

4、平成5年(1993)の警察白書

 (1)、1ヶ月の収入

  101万円以上 5.9%
  
  51~100万円 12.5%

  31~50万円  17.2%

  21~30万円  20.5%

  11~20万円  20.9%

  1~10万円  10.7%

  0円     12.2%

 (2)、資金源

  ①、合法的収入源

   ア)、仕事をしていない者(48.3%)

   イ)、建設業(26.0%)

   ウ)、露店(11.7%)

   エ)、金融業(10.6%)

  ②、非合法的収入源 

   ア)、債権取立て(28.1%)

   イ)、みかじめ料の取立て(13.1%)

   ウ)、覚せい剤の密売(9.8%)

   エ)、賭博(8.8%)

<参考文献>

 『撃滅 山口組VS一和会』(溝口敦、講談社、2000)
 『カネと暴力と五代目山口組』(溝口敦、竹書房、2007)